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□《製作中》
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いきなり、目の前が暗くなった。
急な眠気が襲ってきて、寝たくなんかないのに
身体が言うことをきかなくて。

とうとう、倒れた俺の身体を、そいつが抱きしめたことまでは、覚えている…―――




【裏*貴方を手に入れるために】



気がつけば、そこは見知らぬ部屋の中だった。
窓の外から入り込む明かりは、最早昼のものではなく、夜の真っ暗闇の中にぽつんと光る月のものである。
翼は、落ちそうになる瞼を一生懸命に開き、部屋の中を視線だけで一巡する。
誰かいないかと探してみても、そこに人の姿はない。
擡げた頭から力を抜いて、ぼすんと枕に頭を乗せる。
(えーと…)
回らない頭をフル回転しながら、翼は考えた。
自分の身に一体何が起きたのかを。

数時間前。
自分は授業をサボり、木の上に腰を下ろして昼寝をしていた。
あの時は、まだ日も高かったし、多分お昼過ぎぐらいだったと思う。
そろそろ、授業にでも戻ろうと思ったとき、不幸にもその声を聞いてしまった。
(そうだ…)
翼は、思い出したように眼を見開く。
あれは、間違いなくあの『真性』野郎だった、と。
(俺は、あの時アイツに変な薬を飲まされそうになって…)
必死にもがいて、抵抗して、そして、悲劇に見舞われた。
跳ね除けた小瓶が、運悪く自分の目の前で割れてしまったのだ。
(それで…)
中に入っていた液体が、空気に触れた途端気化し、いきなりの事に対処の遅れた彼に直撃してしまったのだ。
そして、その瞬間、一気に意識が遠のき、急な眠気に襲われた。
眠りたくなんかないのに、瞼が、脳が機能を停止し、落ちていった。
(…最悪だ…)

そう。
その後、彼は、ルイに捕まってしまったのである。
(…くそ…)
身体を起こそうにも、上手くいかない。
まだ、あの小瓶の中身の効き目が切れていないのだろう。
夢現な状態では、声さえまともに出せなかった。
(…どうにかして逃げねーと…)
幸運なことに、今は何もされていない様子だ。
今なら、奴も居ないことだし、逃げるチャンスとしては絶好の好機。
だが、体さえまともに動かせず、声さえも出せない状況下では、アリスの発動も期待できず、どうしたら良いものかと考えあぐねてしまう。
(このままじゃ、俺の身があぶねー…)
今はまだ大丈夫だとしても、あいつが帰ってきたらどうなるかぐらい、嫌でも想像がついてしまう。
(…動け、動けよ、俺の身体!)
気力だけで、なんとか身体を持ち上げる。
だが、気力だけではどうにもならないことというものが、世の中にはあるのだ。
身体は、思いとは裏腹に、ほんの少し動いて、股祖のみをベッドに沈めてしまった。





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