SHORT

□スキナキモチ
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なのに。
棗の声は優しく俺を暴く。


「嘘つけ。なんかあんだろ…?」

「……っ」


だめ。
だめだよ、棗。

そんな目で見ないで。
俺を、見ないでよ。


抑えたい気持ち、
抑えられなくなる。


「嫌な事でもあったのか?」

「うぅん。本当…」

なんでもないんだ。



そう、言いたかったのに。

棗が、あんな事言うから…


「俺には、言えないのか…?」





気持ちが、ぐらつく。

棗。
棗…


どうしたって、手に入らない、オモイビト。


ねぇ、そんな風に俺を見ないで。

気持ちに、
制御が効かない。




「好き…」
「…ぇ?」

「棗が、好きだ」


一瞬、見開く棗の瞳。
流れる、ゲームのBGMも薄れていく。

「なに…言って…」
「好き。ずっと…好きだった」

止まらない、衝動。

駆け抜けていく、枠組み。

壊れる音がする、絆。


「棗が、誰よりも好きなんだ」

何度言っても。
答えなんて、同じ。


終わるんだね。

棗の横。


もう、居られない。


「……流、架…」
「ごめん。困らせちゃったね。」


無理して笑って。
俺、滑稽だよ。


「返事は、いらない…」

だって、判り切ってるから。



「ゲーム、あげるね」

呆然とする棗に、そう言って立ち上がった。
足が、震えそうだ

「もう、話し掛けないから」



困らせて、ごめん…


そう言った俺を、
背中から呼び止める、


「流架…!」


声……


棗。
拒絶の言葉なんか、

俺は聞きたくない。




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