SHORT

□スキナキモチ
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棗を気にし始めたのは、もう随分と昔のこと。

棗は、俺にはないものを沢山持っていて、
憧れる気持ちもあったんだと思う。

初めて
心から向き合える、友達


親友

だけど、俺はそれだけじゃ足りなかった。

誰よりも、何よりも、
棗の1番で居たくて。


俺は、棗を

誰よりも、何よりも、
愛していた…―――


【スキナキモチ】



「棗」
「流架…?どうした」

暇があれば、
俺は棗を訪ね、棗の隣を独占して、優越感に浸っていた。


「これ、棗前欲しいって言ってたゲーム。見つけちゃったから、買っちゃったん
だ。やろうよ」
「あぁ」


棗の隣。
棗の傍。
棗は、俺だけのもの…


「…流架、手ぇ止まってるぞ」
「え?あ、ごめん」


思わず見入っちゃった。

ゲーム画面に視線を戻しても、俺の意識は棗にばかり向く。


この想いが
間違いなのは知ってる。
普通に考えたら、おかしいんだよね。


だけど、俺は…
おかしくっても、
道を踏み外していても、

棗には迷惑なだけだとしても…

好きなんだ。
愛してる。



友達、失格だとしても。
止められない。


また、手の止まっている俺に、棗の手が降って来た。


「…ぇ?」
「熱でもあるのか……?」


様子のおかしな俺を、棗は心配してくれてるみたいだ。


すごく、嬉しい…

「うぅん、大丈夫だよ」

笑って、棗に御礼を言った。
棗の手の触れた場所が、温かい。


あぁ。

俺は幸せものだよね。

棗と一緒にいられるだけで、幸せだって思わなきゃ。


どんなに思ったって。
この思いは届かないんだ。


伝えちゃいけない。

棗の、嫌がること。
しちゃいけない。





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