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□ある日の出来事
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「ひっ、あ」

そんな、ことを考えている内に、身体を這っていた指先が何時の間にやら、下肢に伸びてきていた。
ジッパーを器用に片手で下ろして、下着の中に入り込んできた指。
もう片方の指先は、未だ胸の突起を弄くっている。

「ちょ、おま…っ、性急過ぎっ」
「だって、早く棗と繋がりたいんだもん」

そう言って、しゅっと、ペニスを根元から擦り上げられた。

「あッ」

身体が、浜に打ち上げられた魚みたいに仰け反って、ソファーのスプリングが軋む。

「棗」
「あ、あ、あ」

乾いた音は、やがて濡れた卑猥な音に変わっていき、先端からは先走りの液体が零れ始めていた。

「もう、勃ってる」
「る、さ…ッ、ひ、あ」
「棗は意地っ張りだよね」

気持いいなら、気持いいと言葉にしてくれればいいものを。
いつも、棗は「煩い」だの、「喋るな」だのと言ってくる。
それが、棗なりの精一杯だと知っているから、何も言わない訳だけれど。

「たまには、素直になってよ?」
「だ、れ…がっ」

びくびくと身体を反らしながら、それでも素直にならない棗に苦笑を零し、流架はぐいっと、彼の足を持ち上げた。

「うわっ」
「そういうこと言う、棗にはお仕置き」
「はっ?ちょ、流ッ」

するりと、何時の間に用意したのか知らない紐を取り出し、彼の根元をきつくそれで縛り付けると、有無を言わさず棗のそそり勃つペニスに舌を這わせる。

「あぅッ」

ちゅぷちゅぷと、唾液を含ませ音をわざと大きく立てて、棗のペニスにしゃぶりつく。
最初は髪を持って抵抗していた棗も、数分もしないうちにその力は弱まっていく。

「は、あ、あ」
「んっ」

ちゅ、ちゅ、ちゅ
口に含んでは吸い上げ、舌で転がし、そしてキスをしては上目遣いに棗の反応を楽しんだ。
いつも、無口で余り感情を表に出さない彼も、セックスのときだけは、違う表情を見せてくれる。
それも、自分にだけだ。
棗を愛して止まない流架にとって、それがどれ程の幸福か計り知れない。

「るっ、ぁ、か」
「なに?もう、イキたい?」

訊ねられて、こくこくと頷く棗の目尻には涙が今にも零れそうなほど溜まっている。

「早いね」
「ッ、るさいッ!!」

恥ずかしい、と言わんばかりの声で叫び、棗はりんごみたいに顔を真っ赤にさせた。






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