短編
□言わぬが花
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第百八十五訓 言わぬが花
京次郎の噂は聞いていた。
片『――俺の知り合いに魔死呂威組組長がいるんだけどな、ソイツが昔、拾った野良犬が最近江戸で凄いらしい。。なんでも度胸のある良い男だとか、、』
銀『へ〜。』
片『銀、お前今度見に言って来いよ』
銀『……ん。』
あの当時の俺は旦那にべったりで、多分旦那はそんな俺が少し重たかった。
家庭のあるあの人にとって俺は仕事仲間とかそんな感じで、俺が思ってる恋人とかそういう甘い関係ではなく。。上司と部下ってのが一番しっくり来る感じで。。
ただちょっと俺が旦那に夢中だったってだけだ。
片『地図書いといたから』
旦那はそんな俺と少し距離を取りたかったんだと思う。
でもそれは
【お前は本命じゃない】
そう、はっきり言われてるようなもんで正直ショックは大きい。。
銀『……ん、そこ置いといて』
(この前は次郎長んとこで今度は魔死呂威組か…)
旦那はこうやって俺からの逃げ道を――俺に選択肢を与えてくれてる。
旦那が選んでくるのは筋が通ったイイ男ばかりで何故か堅気で無いヤツが多い。
まぁ今のご時世、堅気で男気のあるヤツなんてそうそういないから旦那のお目にかかったのがたまたま極道ってだけなのかもしれないが――
片『じゃあな銀。また頼む』
銀『はいはいじゃあね』
これじゃまるで
――いき遅れた娘の相手をやっきになって探してる父親みたいだ――
バタン。
銀『はぁ〜』
(いき遅れた娘って…しかも娘って思ってるところが重症だよね。銀さん男だし。ぶっちゃけ旦那以外の男なんてマジ勘弁だし。)
銀『ーーーっつ!!』
気付けよ!
俺を娘の枠で見ている時点でお前もそうとう俺のことが好きだって!
俺を奥さん同様 “愛してる” って!
銀『……鈍感。』
一人残されたダブルベッドに顔を埋めた。
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