咎狗の血

□抑圧感情
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非番のケイスケはいつも通りの時間に起床し、朝ごはんを食べていた。
マーガリンを塗ったトーストをさくっと噛る。

曇りガラスから差す日差しから今日も良い天気だということがわかった。

「………」

しかし、ケイスケの気持ちはどうにも浮かばなかった。

一人暮らしを始めてから、しばらく経つけれど、さみしさを感じるのはこういうときだとケイスケは思った。

「おはよう」
「いただきます」
「いってきます」

そういった挨拶をする相手がいない。

何気ないささいなことだけれど、でも、その「ささいなこと」ができないのは、やはり少し寂しい。

――…こんなとき、思い浮かぶのはひとりしかいない。

――――…アキラ


「今…何してるかな」

ぽつりと呟いてみる。アキラも一人暮らしだけど、俺なんかより力も心も強いからきっと寂しく感じたりはしないんだろうな。


「アキラ…」

自分の想いに気付いたときは動揺した。まさか抱えていた気持ちが憧れじゃなくて好意だったなんて…思いもしなかった。

――…この想いが不毛なのは充分承知の上だった。


伝えられるときが来るのか…それはわからないけど、俺はきっとずっとアキラのことが好きだ。


「…好きって、苦しいな……」

アキラを好きでい続けることは苦しみを伴う。そんな自分を自嘲気味に笑ってみる。…顔が歪んでいるのが嫌でもわかった。

こんなときいつも思う。

―――…女の子だったら良かった。

アキラか俺のどちらかが女の子だったなら。

…でも、もし異性同士ならこの今の関係はないわけで。ともすれば、異性だろうが同性だろうが意味をなさない。


こんな風にアキラの事を考えれば考える程、想えば想うほど寂しさが増して悲しみが心に積もっていく。

最近、ずっとそんな調子なのだ。

「………」



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