FF7novel

□死に目の床
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シェルクから今直ぐリーブに会いに来て欲しいとの連絡が来たのは、病で人が死ぬとはとても思えぬ何とも心地良い春の日だった。



「…リーブ」
「!、ヴィンセント…?どうして……シェルクさん、ですか。あれ程誰にも連絡してはいけないと言ったのに」

床に伏せり、部屋に入ってきた私を億劫そうに認め眉を寄せたリーブは。
目に見えて痩せ衰え、窓際でさらさらと揺れる薄手のカーテンにさらわれてしまいそうな程、儚げだった。








共に戦う様になってどれ位の時が過ぎたのか。
短い時間ではないだろうが、床に伏せるリーブが出会った頃とさして変わっていない様に見える事から、決して長い時とも言えないらしい。

そしてそれは、リーブが死ぬにはまだ早過ぎる、とも言えた。



「何故皆を呼ばない」
皆、というのは勿論、セフィロスとの戦いを共に乗り越えたクラウドらの事だ。

「皆さんと共に戦ったのは、私ではなく、ケット・シーですから」
「……」
「…冗談ですよ。怒らないで下さい」
この期に及んで冗談を言う気力があるのか。
力無く微笑うリーブからは、それが本気なのか冗談なのかは窺えない。


「ジェノバ戦役の英雄である皆さんが一同に集まったりしたら、WROの隊員たちが何事かと思うでしょう?」
「WROの奴等にも黙っているのか」
「…徐々に弱っていく様をわざわざ知らせる事もありませんから」
ふと目を向ければ、サイドテーブルには山と詰まれた書類の束。
集中したいからと人払いをしてはこの部屋に仕事を持ち込み、デスクには腰掛けず…否、病に蝕まれた体では腰掛けられず仮眠用のベッドへ身を横たえ、それでも仕事を捌いていく。
それを想像するのは容易い。



「WROはどうする気だ」
「ここの事は全てシェルクさんに教えてあります。彼女が引き継いでくれるそうです」
「…何でも片付けてあるんだな」
「成り行きとはいえ私が発足させた組織ですからね。死んで放り出す訳にはいきません」
弾みで出たのだろうその言葉に、私は顔を上げる。

「…?どうしました?」
「……いや…」
何故だろう。
改めて、堪らない気持ちになる。
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