FF7novel

□地獄のある風景
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物凄い埃の臭いと。
鉄の焼ける臭いと。
燻る黒煙の臭いと。
…人が焼ける臭いが、する。
いやその臭いしかしない。

「……酷い…」
しゃりと砕け散ったガラス片を踏みそうとしか呟けない自分が一番残酷だと思った。



鉄屑の荒野と化したそこをただただ歩き、見渡し、息のある人を見付けてはありったけ持ち出してきたポーションとケアルで癒した。
人を探していると聞けば喉を嗄らして共に探し求める人の名を呼んだ。
直到着した神羅の救護隊が同じ事をしていても、彼らには任せたくなくて勝手に救助を続ける。

偽善者。
自分で自分を罵った。

偽善者。偽善者。
お前だって神羅の癖に。
お前が。

一番の偽善者の癖に。


頭を振って自虐を追いやる。今は、そんな自虐で自分を責めて反省に浸っている暇はない。
過ぎてしまった事を振り返っている余裕があるならば一人でも多くの命を救わねばならない。

「…部長!ここに居られましたか、危険ですからお戻り下さい!」
「断る。君も手が空いてるなら手伝いなさい、いや…血液が足りない。社内で献血を募ってくれ、至急だ!」
私を連れ戻しに来た部下は逆に一喝されて、ぐ、と何かを飲み込み来た道を戻って行く。
それを目の端で見送ると私は瓦礫の下から引きずり出した女の子を抱き上げる。
止血し切れないその子の鮮血が、どろりと私の肌を舐めた。

もうこの子は。
助からない。


「女の子を探している人は居ませんか!青いワンピースの、三才位の女の子です!」
叫ぶと焼けた空気が喉を潰した。
噎せて、唾液で一度喉を冷やしてから同じ行を叫ぶ。
叫ぶ。繰り返し、叫ぶ。

物凄い埃の臭いと。
鉄の焼ける臭いと。
燻る黒煙の臭いと。
人が焼ける臭い。

汗と血錆の臭い。
命が身体からすり抜けて行く臭い。

身体が命を失い、一個人ではない、一固体に成り果てて行く臭い。



何故。
何故なのです、社長。何故こんな事を。
これが貴方が望んだ物?
私はこんな事の為にこんな物を作っていたのか?


違う。
違う違う違う!私は!
人々が。幸せに。平和に。暮らしていける…。
そんな街を作りたいと。

ただそれだけ。それだけなのに。
スラムだって住み良い街にしようと。つい先日調査に赴いたばかりで。
方案も作った。プレゼンもした。予算だって下りていた。
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