今日からマ王*dream

□今日からわたし…2
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「う…ん。ここは…、戻ってきたのか…?」

有利の脳裏に浮かぶコンラッドの後ろ姿。
襲撃を受け、ギュンターが毒矢にかかった。
更には逃げ込んだ教会で、今度はコンラッドが。



「渋谷!気がついたか。良かった。」

覗き込んだのは村田だ。
ついと視線を下にやる。

「て、なんで紫乃抱き抱えてんだよ!」

目を閉じた紫乃を上体が起きるように抱えている村田。

「なんでって、女の子を地面に寝かしておくなんてできないだろう?」

「だからって抱き抱える必要がどこにあるんだ。
そこはせめて膝枕とかだなぁ…」

「あは。渋谷妬いてるのかい?かわいいなぁ。」

「そういう問題じゃなくて!」

「…う…ん…」

「紫乃!?」





―……て…


…誰?
ママ…?


―…を……て…


聞こえないよ、ママ。
なーに?


―…目を…覚まして…
その身に…宿し…ち…から…―


…え…?






「紫乃!紫乃!」

名前を呼ばれて目を覚ました。
一番最初に飛び込んできたのは、心配そうなゆうちゃんの顔。

「ゆうちゃん…」

「あー、良かった!
大丈夫か?苦しくないか?どこも痛いとこないか…
!!」

今まで心配そうだった顔が驚いた表情に一変する。

「紫乃、その目…」

「え?」

「おま、目、目の色、どうしたんだ!」

「色?」

ひょいと村田が覗き込む。

「あれ、今まで気づかなかったけど、紫乃ちゃんの目、綺麗な紫色だねー!」

「え…紫?」

「そんなわけないだろ!
紫乃も俺も、れっきとした日本人だし。
て、そういえば、なんか髪も少し紫がかってないか…?」

「言われてみればそうだねー。紫黒(しこく)ってとこかな。」

「う、うん?」

当の紫乃の頭にはクエスチョンマーク。
ん?目と髪が?
紫?

「えっとー…
それってなんか出来物が出来てるとか…
私、怪我してるの?」

自分を見つめる二人を交互に見やり、子首をかしげて尋ねると、
普段と変わらない様子の村田は、紫乃の髪を一房手に取り、柔らかくすいた。

「いや、目と髪の色が紫がかってるだけで、他は変わったところは無いよ。」

「ほんと?」

「うん。僕の知ってる紫乃ちゃんと一緒。
僕が会った女の子の中で、一番可愛いよ。」

「健ちゃん…。えへへ、ならいっか。」

うっすら頬を上気させる紫乃。
二人のやり取りに有利も黙ってはいない。

「村田!
どさくさに紛れて紫乃を口説くな!
それで、とりあえず痛いとこは無いのか?
ちゃんと見えてるか?」

「うん、全然大丈夫だよ。

私、どうして…。あ、そうだ、ゆうちゃんが渦に呑み込まれて。
助けようと思って飛び込んで。」


その時、木の葉が音をたてる。
異国風の女性がこちらを見て驚いている。

「きゃあ!黒い髪に黒い目!!」

そう叫ぶと慌てて立ち去ってしまった。


「(この反応は…まだ異世界なのか。)」


「とりあえず、あの子が行った方に向かってみるか?
紫乃ちゃんどう、動けそう?
なんなら僕がおぶってってもー」

「よくない!」

「ふふ、大丈夫だよ健ちゃん、優しいんだね。
ありがとう。」




暫く行くと大きな街に出た。

「別世界…なのかな?素敵な街並み。」

町の外れ、
有利と村田は上着とサングラスを交換している。

「とりあえず、何か仕事探そう。
お金稼がないとな。」

ここがどこであれ、とにかく交通費を稼いで眞魔国に戻らなければ。
何より紫乃が危ない目に遭ったら…
それに、コンラッド達の事も気になる。

「紫乃はここで待ってな。
いいか?誰かに話しかけられても、絶対に着いていっちゃ駄目だぞ。」

「うん、わかった。二人とも頑張ってね。」

二人に手を降り見送ると、ぐるりと辺りを見渡す。
見知らぬ土地だけど、どこか懐かしい気配がするのはどうしてだろう。

「だからかな…そんなに怖くない。
ゆうちゃんと健ちゃんが一緒だし。
きっと大丈夫。」


to be continued…

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