今日からマ王*dream

□今日からわたし…3
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「あんたらここがどこかも知らんのか?」

お昼時。ふわふわ白髪頭のお爺さんと港の縁に腰かけている。
ここはカロリアという街らしい。
やけに元気なお年寄りが多いなと思っていたら、若い者は兵役にとられたとう。

「そうなんだ、戦争、かな。」

「とりあえず、ここの領主様に会ってみようよ。」

「え!
紫乃も村田も、なんで言葉わかるんだ?!
なんで?!」

慌てた様子の有利。

む?ゆうちゃんも喋ってるよね?
なんだか変なゆうちゃん。






領主様の館には意外とあっさり招き入れられたが
話の最中で二人組の男が乱入し、領主様のフリンさんや有ちゃんに乱暴しだした。
と思ったら今度はまた別の兵らしき人がたくさん入ってきて・・。

もう何が何だかわからない。
怖い・・。




「お前ら・・コンラッドを・・。」

入ってきた兵士を見て、急に有利が立ち上がる。

「ゆうちゃん?」

怒りが込み上げてくるといった様子の有利に戸惑う。

「おい、渋谷。」

「じっとしていろと言っているだろう!」

兵士達は銃口を向けて威嚇している。

「あの、すいません、こいつ何だか混乱してるみたいで・・うわあ!」

突如、有利の周りから竜巻の様に風が吹き荒れ、諌めようとした村田が弾かれる。

「ゆうちゃん?!健ちゃん!」






―ここで出たか。

渋谷は何かに興奮して魔力を放出してしまった。
流石は魔王といったところか、大した魔力だ。



「うわああ!!撃て、撃て!!」

焦った兵士達が有利に向かって銃を構える。

「!ゆうちゃん!危ない!」


村田の隣にいた紫乃が叫んだ、その瞬間。

ふわりと、温かい気に包まれた。


見れば、有利や村田、フリンや執事の周囲は淡い紫のベールで包まれている。



―これは・・彼女の力か?



紫乃自身、淡い藤色に輝きを放ち、紫黒の髪は柔らかく波打っている。
一点を見つめる虚ろな瞳は聖女の神々しさをも感じさせた。

そんな紫乃を見つめる村田。


―やっぱり、君なんだね。 




湧き出た紅茶の波によって、あっという間に兵士達は流された。
廃墟の様になった広間。

有利の力が消えると、自分たちを覆っていたベールもまた、溶けるように消えた。

その瞬間、ぐらりと倒れる紫乃を村田が抱きとめる。


差し込む月明かりに照らされた紫乃の白く美しい顔は、あの頃と変わらない。


厳しい時代だった。
創主との戦乱の中で、次々と失ってしまう命に、また、生じた多くの悲しみに。
優しい彼女は、いつも心を痛めていた。



―また、こうして僕たちのところに、逢いに来てくれたんだね。


今度の生が、彼女にとって幸いなものになりますように。
今度こそ、この手で僕が守るから・・。
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