オリジ短編
□Kotka
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俺は、腐男子だ。
自分のことを腐った男子と称するなんて、おかしなことなのだが、現在のオタク用語ではそう呼ぶ。
パソコンを買ってすぐだったろうか。
妹が俺の少年漫画雑誌を読み始め、一晩中パソコンで漫画のキャラ同士がイチャイチャした絵とかを見だした。
男女だったその絵は次第に男同士に変わり、中学に上がる頃には自分で描くようになっていた。
そんな妹の変化を見つめていると、興味が沸いてしまったのだ。
好奇心も手伝い、アニメもやっていたし、と手に取った学園モノのゲームで、俺は抵抗もなく一気に目覚めてしまったのだった……。
妹は同士が出来たと喜び、漫画や小説などを貸してくれるようになった。
ずるずるとそっちの世界に引きずり込まれて、今に至る。
始めは寮付きの男子校に入学しなかったことをすごく悔やんだが、今はこの状況に満足だ。
だって、夢に描いたようなBLが目の前で展開されているんだぜ!?
生まれてきてよかった。
この高校に入ってよかったー!!
「ごめん。卵、味薄かった」
「いや、ハルが作ったから旨いよ。それに俺はこれくらいが好きだし」
「そうか…でも薄いだろ?
他が濃いめだし」
「俺のから揚げが濃すぎなんじゃない?」
「いや、から揚げはこれでいいだろ……うまいし」
昼飯中の今だって、同棲中の恋人みたいな会話してるし…。
最近デレ分が多くて嬉しいよ。感激だよ。
菓子パンをかじりながら友人越しに二人を眺める。
食べているメンバーが違うので、必然的に盗み聞きになっているが、相手が気づかなければ大丈夫だ。
…多分。
「未季、聞いてんのか?」
「あ、あぁ!聞いてる聞いてる」
慌てて頷き、菓子パンを頬張った。
…急いで食ってもメロンパンはうまい。
「じゃあ来てくれんの?」
「あ、あぁ…うん…?」
「じゃあ詳しいことはメールするな〜」
やべ、全然聞いてねぇよ。
この後おいしく頂かれちゃう春樹を妄想して腹がいっぱいになってたぜ…。
頷きながら、メロンパンの最後のかけらを無理矢理口に押し込んだ。
このあとオッケーの返事をしてしまったことを、俺は後悔することになる。