オリジ長編

□抱きしめたい
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あーー、どうしよう。
冷静さを装って部屋を出たけれど、俺の心臓は異様にどきどきしてる。
同じ部屋で二人きり…。
いや、いつもなんだけど。

今日こそはいけるんじゃないか、なんて…。
だって今日は俺達を邪魔するモノがないし。
本当に二人きり…。

お風呂をおいだきにしてから、飲み物を持って階段を慎重に上がっていく。
白いとびらを開けたら、そこにはノートパソコンに向かうハルの姿が……って。

「ハ、ハルっ…どうしてパソコン…持って…」

「…そりゃ決まってるだろ、エロ…」

「却下」

飲み物をテーブルに置いてから、ハルのノートパソコンを閉じる。
電源は切れていないから、多分そこまで怒ってないはずだ。

今日は、今日こそは二人きりになれたと思ったのに。

「あっ…おい!何するんだよ秋羅っ!
もしデータ飛んだらどうしてくれ…ん、んんっ?!」
身を乗り出して、乱暴にくちづける。
眼鏡が邪魔だったから、左手で銀色のそれを取り上げて、再び行為を開始した。

ハルが必死になって離れようとするから、後頭部をぐっと押さえる。
小さく開いた唇の間に舌を侵入させてみると、恐怖からなのか抵抗がなかった。
舌に絡み付いたり、歯列をなぞったりしながら、熱い口内を犯していった。
ちょっとやり過ぎたかな、後で怒るのかな…。
怒るだろうなあ…。

今更弱気になってそっと口を離すと、ハルは口元をごしごしと拭う。
やはり怖かったのか、嫌だったのか…、目尻には涙が浮かんでいた。

俺のことを眼鏡のない素顔で睨みながら
「な、な、なにしてくれてんだよお前っ…実はガチホモだったのかよ…!
親友だと思ってたのに、ウホの人だったのかよっ…絶望した!」

「あ、あのねハル…」
俺の話には耳を貸さずにハルは続ける。
いつもより早口だ。

「そりゃお前のことは嫌いじゃないけどさ…つーかさっきのファーストキス……俺はかすみんに全てを捧げる予定だったのに…!!」
ごめんかすみん、とハルが嘆いている。
ファーストキス…ねぇ…。
ハルは彼女いない歴=年齢(もうじきかすみんと籍を入れるとか言ってるけど)
を貫き通すって言ってたし。

「ハル、聞いてよ」

「何だよっ、もう話しかけるなよ…。お前なんかアベさんに掘られればいいんだ…」
体育座りでいじけてる。
ごめん、ごめん、聞いてくれよ、何回も言っているのに顔は下を向いたままだ。

あれ、だけど。
耳が赤いような…。



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