オリジ長編

□ソレは真実なのか
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早鐘のように鳴り続ける心音に、聞こえないふりをしながら秋羅の家を出る。
鎖骨より少し下にある赤い噛み痕は、
何ともないのに、熱い。
ああ、焦っていたせいでさっき冬也に外された眼鏡を忘れた。


毎週楽しみにしていた『マジカル☆おやゆび姫』の内容が全く頭に入って来なかった。
気付かなかった俺もアホだけど、こんな痕を体につけたあいつもアホすぎる。

女じゃないんだから、見つかったらどうすんだよ…。
冬也が言うように、蚊に刺された、は王道の言い訳だし…。
帰ったら絆創膏でも貼るか。


忌々しい気分のまま自分の家に到着。
ドアを開けても夏那は来ない。昨日はパーティだったらしいし、まだ寝ているんだろう。
並んだサンダルを見る限り、まだ夏那の友達はいるみたいだし。
ため息をつきながら靴を脱ぐ。
散らかっている室内を見てもっと気が滅入る。
とりあえず絆創膏をリビングにある救急箱から取り出した。

絆創膏を貼るために、鏡台で痕を確認する。
赤く染まったそれは、鏡越しに見てもいやらしく感じて、自分の顔も赤くなっていった。

これがエロゲーとかでよくある、独占欲のあらわれ的な?
ナニ俺、いつか監禁とかされんの?
いや秋羅に限ってそんなことは…。

あー変な妄想やめよ。
今はそう『マジカル☆おやゆび姫』のおやゆび姫たんで頭がいっぱいな時間のはずだろ?
録画しておいたHDDを見ないと。

絆創膏を貼り、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぐ。
冷えた麦茶は、俺の心を落ち着かせてくれた。



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