オリジ長編
□そんなの知らない
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「あ、昨日の…」
「秋羅くん、いらっしゃい〜」
「…秋羅。わざわざ、ごめん」
たくさんの視線に包まれながら、俺は台所にいるハルに眼鏡を手渡す。
ハルはそのままそれをカウンターに置いて、棚からフライパンを取り出した。
「またご飯?」
「…夏那たちの、分」
なるほど。どうやらチャーハンを作るらしく、ハムや卵を冷蔵庫から取り出している。
「手伝うよ。ハル一人じゃ時間かかるから」
「あぁ。じゃあ俺、具を切るから」
そうして手際よく具を細かくしていくハル。
俺はご飯を炒めて、ハルが切った具も入れていく。
そうして出来上がった卵チャーハンを、夏那ちゃんが器によそっていった。
「出来た」
「ん、ご苦労だった」
「はいみんな、お待たせー」
夏那ちゃんがチャーハンの入った容器をテーブルに並べていき、俺がフォークやスプーンを置いていく。
ハルはもう手を洗い、ソファでくつろいでいた。
他の女の子たちは目を輝かせて
「わぁ、マジおいしそう」
「すごーい、上手なんですね」
「あのこれ…春樹さんが?」
眼鏡の女の子は、ハルの方を艶っぽい視線で見つめながら尋ねる。
一目惚れ、ってやつだろうか。
困った顔で振り返ったハルは掠れた声で
「…いや、別に…。あき…こいつがほとんどやったから」
「そうなんですか…でも、おいしそうです」
そう言ってやわらかく笑う彼女を、ハルはちらっと見遣ってからどうも、とだけ言ってそっぽを向いてしまった。
素っ気ないな、そう思うのに、心のどこかで嬉しく思っている自分が醜い。
」