オリジ長編

□嫌よ、嫌よも
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『やったー!』

『うぅ…負けましたぁ』

右側の少女はVサインで、左側の少女は悲しそうに眉を寄せている。




結果的に言うと、負けた。
パンピー相手なら余裕だろ、とか思って「なんでも言うことを聞く」とか約束しちゃったけど、秋羅は赤子の手をひねるように俺を倒してしまった。
3連鎖、4連鎖とぽよを崩していき、俺はなすことなくお邪魔ぽよに埋め尽くされてしまう。
なんだこいつ、やべぇ。
相殺するスキすら与えなかった…。

「なんでも聞くって言ったよね。どうしよっかな〜」

悪魔…いや、魔王のような笑みで言う秋羅。
あームカつくムカつくムカつく!!
でも負けは負けだ。
ここで嫌だとか言ってたら男が廃るってものですよね!えぇ!
これが2次元だったら。相手が女の子だったら。
私を抱いて、とか、私にキスして下さい、とか…。

現実は3次元で、男だなんて。
いや、秋羅のことは嫌いじゃない…、けどさ。
まだ残っている噛み痕をTシャツの上からなぞる。

駄目だ。
あのときのキスとか、この噛み痕とか、何回も思い出してしまう。
はじめてだったから。
男同士だから。
好きだか…ら…?

ファーストキスからはじまる二人の恋のヒストリーなのか?!ねーよ!!

でもキスは別に、嫌な気持ちとかではなくて、むしろこれは…やっぱり…



あ、ケータイが鳴った。
着信音はかすみんが登場するエロゲー『どきどき☆数学漬け』のオープニングソングだ。
新道こずえ…メガネ娘だろう。先程秋羅とぽよぽよしてくる、と返信をしてからまだ5分ちょいしか経っていない。

スイーツ(笑)予備軍に擬態しているからか、メールの返事の速度が異様だ。
絵文字と顔文字の量もな。

携帯に手を伸ばし、内容を確認した。
秋羅が画面を覗き込み、二人でメールの文章を黙読する。

『そういえば秋羅さんとはどういうご関係なんですか?是非、写真とか見たいです!o(^-^o)(o^-^)o』


空気が固まった。


バレてる…のはありえない…だろうから、つまりオタク女じゃなくて、腐女子?



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