銀魂小説orz

□LOVE定額
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「…よう」

「どうしたの?めっずらしーい」


ある日の午後、久々に休みがとれた土方は銀時の経営する万事屋を訪れた。べつに依頼をしにきたわけではない。
銀時と密かに恋仲にあった土方は休みの日ぐらい銀時と一緒に過ごしてやろうと思い万事屋を訪れたのだ。


「よかったな、今神楽も新八もでかけてていねーんだよ」

「だからなんだ」

「寝室いく?」

「行くわけねぇだろバカ!」

銀時のいつも通りの冗談を軽くあしらうと土方はさっさとソファのある部屋の方へといってしまう。
この部屋に入るのも実に1ヶ月ぶり、恋人同士なら誰しもが離れていた時間の分おもいっきりイチャついていたいものだ。

しかし三十路近くのおっさん2人がイチャイチャしているのはあまりに気持ち悪い。それは誰よりも本人たちが一番理解していることで、取りあえず2人は同じソファーに座わっただけで土方は煙草を、銀時はもう何度も読んだジャンプをあきもせずに読み返していたのだった。


そんなとき、ふいに机の上においてあったものを見つけた土方。


「…それ…」


それはピカピカした真新しい携帯電話だった。


「ん?あぁこれ?仕事用にな。外出てるときとかにお得意さんから電話とかあったら困るからなぁ。一番安いの買ったん‥」

「なんでケー番教えねぇんだよ」

「…は?」

話をさえぎられ、驚いた銀時は読んでいたジャンプから土方の方に目線を移す。土方は煙草を吸いながら少々苛ついた口調でもう一度質問をする。

「携帯買ったんならなんで教えねぇんだ。てか、買うなんて一言もいってなかったじゃねぇか」

「だぁから、これは仕事用のだっていってんじゃん。プライベートでは使ってねぇんだよ」

「俺は仕事用のも教えたじゃねえか」

「あれはてめぇが勝手に冷蔵庫に貼ってったんだじゃねぇかぁぁぁあ!!お前あれっ…本当に恥ずかしかったんだからな!!」

顔を赤くしながら叫ぶ銀時。土方の表情は先ほどにも増してさらに曇っていた。銀時はその様子に気づいてはいたが、何故土方がそこまで機嫌を悪くしているのかわからず、だんだん銀時も苛立ちを感じ始めていた。

(…ったく、わけわかんねぇコイツ)

「まじさぁ、ケー番くらい教えなくったっていいだろうが。どぉせ俺は毎日暇なんだし…ぬぉおっ!!」

呆れた銀時がもう一度ジャンプを読もうとすると、土方は銀時の腕を掴み玄関の方へ歩き出した。


「ちょちょちょっ、ちょっとぉぉお!!何やってんのお前ぇぇえ!!」

「仕事用だから教えないんだろ。だったらプライベート用のを買うまでだ」

「はぁぁぁぁぁ?ふざけんなよ!!いらねーよ携帯二つも!!だいたい俺金ねーし」

「俺が買ってやるから安心しろ」

「……っ」

さすがにこれは自分勝手過ぎると銀時が土方の顔面にパンチをくらわそうとしたとき銀時は見たのだ。
いつもポーカーフェイスを気取ってる土方のまるで欲しいものを買ってもらえず駄々をこねる小さな子供のような顔を。


まさかこいつ…拗ねてるのか?


あの鬼の副長が


こんなことで





「……ぶはっ」

「うわ汚ったねっツバついたじゃねぇかバカ!!」

「あーごめんごめっ…あははは」

「何なんだよ何がおかしいんだよ!!」

「いやぁ…、いいねぇプライベート用携帯!!買って買って!!」

「はぁ…?…言われなくっても買ってやるって言ってるだろぉが」



あんな珍しい表情拝ませてもらったんだ



俺の電話一つで鬼さんの機嫌が直るなら毎日でもかけてやらぁ




「お前、まじで覚悟しとけよ」

「…?…あぁ…」



銀時の手を引っぱって足早にあるく土方の少し穏やかになった顔を見ながら
銀時は土方に何色の携帯を買ってもらうか考えていた。













それから数ヶ月の間、土方は銀時の女子高生並の長電話に悩まされながらLOVE定額にでも入っとけばよかったと心の底から後悔したという。



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