*リクエスト作品*
□恋は曲者
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我が家はいつだって騒がしい。それこそ、毎日が戦争みたいに。
「……ん、う」
家の外で雀がチュンチュン鳴いちゃってるような天気のいい朝。
起きてまず視界に入るのが、ルキ兄の寝顔だ。昔はベッドから転げ落ちるくらいビックリしてたけど、今じゃもう慣れっこ。
ルキ兄は一年くらい前にここに来た人なんだけど、空き部屋がないからということでオレと一緒の部屋で生活している。
別にそれ自体は構わないんだけど、ルキ兄には困ったクセがあって。
「……動けない」
背中にがっちりと回された腕。
ルキ兄はいつもこうやってオレを抱き締めながら寝てしまう。本人が言うには「サイズ的に抱き枕として丁度いい」らしいんだけど、抱き着かれる側としてはかなりの迷惑なんだよなぁ。体格差があるから引き剥がすのにも一苦労だし。そんなに抱き枕が欲しいなら買えばいいじゃん。
脳内で文句を言っても仕方ない。さっさと起こして離してもらわないと。
「ルキ兄、朝だよ」
ぺしぺしと軽く頬を叩けば、小さく身を捩るルキ兄。起きたかな、と思ったら突然上に乗っかってきた。
「え、ちょっ、」
ルキ兄の一房だけ長い桃色の髪が頬にかかる。あんまり体重はかかってないから苦しくはない、けど。
目の前には、ぼんやりと開かれた空色の瞳があって。
「……れ、ん」
目覚めたばかりの低くて掠れ気味の声は、まさに“大人の男”のものだ。
妙な色気を含むそれにドキドキしながら、自分を解放するよう訴える。
「んー……」
まぁ、唯一の救いは寝起きがいいことかな。心臓が落ち着いた頃にはもう既にルキ兄の目は完全に覚醒していた。
「今日何曜日?」
「……土曜日」
「土曜日、か」
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