半魔双子の日記

□第9話 美男子戦士セーラーデビル
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(前書き)
グリ友の手になる同名のイラストがあまりに素晴らしかった(←!?)ため、俺はその感動を作品にしてみました。


5月25日

デビルメイクライ累計1000万本キャンペーン
in 東●ドーム


「凄…」

ダンテは息を呑んだ。5万という数を実感する。その全てがステージ上の双子の姿に熱狂している。

累計1000万本キャンペーンのために、今日は歴代の主人公が全て出演の予定であり、ドームは満席で入り切れない客は、屋外の大スクリーンで舞台の様子を見ているのだった。

双子に続いて1のダンテが上手から登場した。若い女性ファンとゲーマーから熱い声援を受ける。

微笑んで手を振る姿を見ながらダンテが、
「いいよなあ、あの服で…」
と、バージルを振り返った。

「そう思わねえか?バージル。」

「俺は誰かを羨ましいとは思わない。」
バージルは、口をへの字に結んで答えた。

「だってよ、アイツはズボン履いていられるんだから…」

「俺達も履いている。」

「ギリのミニスカートだぜ!見るのはいいけど、自分が履くとは」

「パンツは履いているんだから、文句を言うな。」

「バージル、顔中びっしょり濡れてるけど…」

「舞台効果に雨を降らせているからだ。」
バージルが顔中に脂汗を流しながら言った。


バイクのエンジン音が轟き、2のダンテが華麗なハンドルさばきで舞台に跳び上がって来た。大きな熱いドヨメキは、大人の女性ファンからのものだった。

「いいなあ、クールに決まってて…。」
ダンテが、またぼやく。

「煩いぞ。」
叱るバージルに、
「だってオレ達パンツつっても、Tバックじゃんか!オレはファンに尻丸見えだし、バージルはもっこりがあらわで色が赤…」

「俺のはシメコミだ。日本男児だからな。」

「オレ達アメリカ人だぜ。」

「俺は国籍が無いから勝手に日本」

「そうか…にしても、ナイスバディのルシアちゃんを抱き降ろして渋かっこいいなあ…アンタの赤いのは、日本じゃ赤フンて言うらしいぜ、バージル。」

バージルが返事をしないので、ダンテは振り返った。

「バージル、目から何か出てるけど…」

「汗だ。その証拠に塩からい。」

バージルはぼろぼろ涙をこぼしながら言った。


今度は、金切り声に近い女性ファンの声と、若年層ゲーマーのエールを受けて、4のダンテが登場した。
赤い剣を空間に撒き、口にくわえた薔薇を投げてパフォーマンスする。

「凄え色気だなあ…チョイ悪オヤジ風に決まってて…あのバックル付きの赤と黒の上着、オレも着たいぜ」
「上着なら俺達も着ている。」
バージルが涙と洟を流しながら歯を食いしばって言った。

「上着ったって、セーラー服だぜ!ウエスト上げてあって、ヘソ見えるし。」

「5月にしては暑いから、丁度いい。」

「キリエちゃんをエスコートするのに、さりげなく薔薇の花渡してるし!…くう、羨ましいぜ」

「羨ましくない!」
いつも青いバージルの顔色が、青を通りこして緑になっている。

ダンテは、バージルのナマ足を見下ろして言った。
「バージル、アンタの足元ハイヒールなんだな。」

「そういうお前は、ピンクの編み上げブーツだ。」

「残りのダンテ達が、みんなこっちを指さして笑ってんだけど…」

 バージルの緑のコメカミに、太い血管がビキビキと浮かび上がり、目が赤く血走った。しかし、言葉は冷静に、
「笑わせておけ。俺は仕事に泣き言は言わん。」

「何て偉いんだ、バージル!オレ、今日ほどアンタを兄貴として尊敬したことねえ。こんなセーラームーンの衣装着せられても、文句ひとつ言わずに頑張るなんて。…オレ、さっきから弱音ばっか吐いて、アンタに済まねえ…。
でも、この舞台高いから、オレ達のスカートの中丸見えで、さっきから下のファンが鼻血出してバタバタ倒れてんの見ると情けなくて情けなくて…」
ダンテは目に涙をためてバージルを振り返った。

「バージル…目から赤い水が出てるけど…あと、口から泡?って、白目剥いて…おい、バージル、バージル?」

バージルは閻魔刀を構えて立ったまま、物凄い形相で気を失っていた。


そのころ舞台裏では、ネロが泣きながら二人の女性に謝っていた。

レディは厳しい顔でネロを見据えながら言った。
「ダンテ達を見たでしょ。あれだけのキャリアがあっても、血の涙を流しながら仕事しなきゃならないのよ。駆け出しのアンタが衣装ぐらいのことで仕事を選り好みするもんじゃないわ。」

隣からトリッシュが、
「わかったんならいいわ。さ、行きましょ。」
と許しの言葉をかけた。

ネロは沸き出る涙を悪魔の右腕で拭って、ミニスカートの裾を気にしながら二人の後を追ってせり出し舞台に跳び乗った。…自分のセーラー服姿を見たキリエが、気を失って倒れる姿を無理矢理頭から追い払いながら。

ゲーム会社の人気キャラという仕事の厳しさ、つーかこの企画のムゴさに、ネロは叫んだ。

「セーラームーン萌えのオヤジを企画担当にした責任者ああああーっ!出て来いいい!!!」

ネロの叫び声は、ドーム一杯に湧き上がる嵐のような歓声と笑い声にすぐにかき消された。


(了)
 

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