ポエム
□『烙印』
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(イラスト:カシスさんより:missinng)
『烙印』
その光景は
ピエタではない
なぜなら瀕死の兄は、まだ最後の息を継いでいる
弟は、腕の中に遠くなっていく
兄の呼吸の音を聞いている
それがあまりに微かで
口づけのごとくに顔は近付いても
待っているのは、神から与えられる灼熱の瞬間
……迷いの末に決断し
己れの手を
血で汚して招いた
……永遠の罪
……永遠の孤独
……永遠に続く悲しみ
烙印が
押される瞬間
双子に生まれたというのに
天の祝福から遠く
同じ場所に生きることも叶わず
僅かに共にできた時間を
傷付け合わねばならず
本当に言いたかった言葉は
別の言葉に塗り潰された
烙印が
押される瞬間
悪魔さえも泣くだろう……………
本当に言いたかった言葉をただ己れの胸の中で繰り返しながら
(了)