ポエム
□『桜』
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桜が咲きはじめましたね。花の下の夢を一話。
詩ではないのですが、他に入れる場所がないので。
『桜』
バージル:
『人はいざ
心も知らず
ふるさとは
花ぞ昔の
香ににほひける』
…花の香りだけは、変わらんな。
ダンテ:
馬鹿言え、俺達は変わってないさ。ずっと、父さんと母さんと双子のままだ。
バージル:
変わってないか?
魔界に堕ちて、こうして、墓参りに来る時しかお前に会わない俺が。
ダンテ:
変わっているもんか。
アンタは、ずっとバージルさ。
バージル:
お前は、ずいぶん老けたな。
(微かな笑う気配)
ダンテ:
ちぇ。
アンタは、いつまでも若いまんまかよ。
バージル:
(寂しそうな声)
理由はわかっているだろう?
ダンテ:
知らねえよ。
知りたくもねえや。
バージル:
俺が、死んでいることが怖いか?
事実は事実だ。
目を逸らさずに認めろ。
(…来年は、もう形になれないかもしれない、と淡い青い影は言った。)
ダンテ:
いいや、アンタはまたここへ来るんだ。
アンタは、何ひとつ変わってない。
…オレが、アンタを呼んだら、必ずやって来るんだ。青い空に、花の色がこんなに綺麗な春に、アンタはここへ来なくちゃいけないんだ。
いいか!
振り向いた古い墓の傍らに、ただ桜の木だけが爛漫と咲き誇る。
『願わくば
花の下にて
春死なむ
その如月の
望月の頃』
すきな歌の通りになんか、なれなかったくせに。
(了)