空は紅

□月と猛獣
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窓の外から聞こえる、激しい水の音。

空に太陽の顔はなく、代わりに灰色の雲が空一面を覆っていた。

窓に降りかかる水は、まるでバケツの水をそのままぶちまけたかのようにも思える。

今日の雨は、少し推量が多かった。



『はぁ・・・』



そんな景色を見て、私は一人ため息をついた。










07:月はいつでも夜空にあり









今日は朝からあいにくの雨。

気分は暗黒。


私は別に雨は嫌いじゃない。

出かけられなくなるのは嫌だけど、体育が中止になるし、草木も元気に育つ。

全然問題はない。


だが、今回はそうもいかないのだ。

実は、今日はかすが先輩と市先輩と屋上でお弁当を食べる約束をしていた。

しかし雨で屋上は立ち入り禁止。


たとえ明日雨がやんでも、屋上は濡れてるから明日も行けない。

・・・楽しみだったのにな、かすが先輩たちとのお弁当。


教室でも食べれるけど、ガールズトークが出来ないのは悔しい。

是非かすが先輩と市先輩の恋の話を聞きたかったのに、と肩を落とした。





「・・・さっきから不機嫌そうな顔しているがどうしたんだ?弁当がまずいのか?」





かすが先輩は自分の箸を止め、私の顔を見てきた。

え、そんなに不機嫌そうかな、私。

首を横に振る。

何でもないです、と言えば、「屋上じゃなくても別に平気だろ?」という返事が。

・・・良く不機嫌の理由が分かったね、先輩。





「これも市のせい・・・。うふふふふふ」

『いや違う!違います!ちょ、黒いオーラ出さないでー!』



かすが先輩の言葉に、市先輩が反応する。

そして、何かずももももとかいう効果音と共に黒い手がいっぱい出てきた。

あっ、おかず一個取られた!




「いッ、市のせいではない!」

『違いますからね!そ、そうだ!雨です!雨の神様のせいです!コノヤロウ雨の神様畜生人のせいにしやがって』

「そう・・・?」




私達が慌ててそう言えば、市先輩は落ち着いたように微笑みをこぼした。

私の台詞最後のほう棒読みというね


あ、危ない危ない・・・。

2人してほっとため息をつく。

おかずが少し犠牲になった。

私のトンカツが・・・。





『どうせまた晴れたら屋上で食べれるんですし、凹んでも仕方ないですよね』

「そうだな。それにそこまで拗ねる必要もないだろうし」

「楽しみ・・・だったけれど、まだ皆で食べれるから、良いと思うわ・・・」





先輩達の言うとおりです。

雨だったから少し気分が落ち込んでいたのかもしれない。

苦笑いをしながら、頷いた。






『っていうか、二人ともお弁当美味しそう・・・』





ふと、箸を口に入れたまま二人のお弁当を見る。

そう、先輩達のお弁当は私から見るととても輝いていた。

自分で作ってるんだよね・・・どうしたらこんなメニュー作れるのだろうか。

疑問に思う。

まさに、食欲を誘うお弁当!という感じだ。





「そうか?」

「そう・・・?」

『そうです!むしろ私が食べたいです!』




そう言うと、先輩達は顔を見合わせた後、苦笑いをこぼした。

あれ、私変なこと言ったかな?

首をかしげていると。





「1つだけ分けてもいいぞ」

「私も・・・」

『え、良いんですか!?』




驚いたように言えば、二人は同時に頷いた。

感激して目が輝く。

こんな美味しそうなお弁当が食べれる日が来ようとは・・・生きてて良かった!

そうとまで考えてしまう。



『では、ありがたく』 





両手を合わせて頭を下げる。

そして二人の弁当に箸を伸ばし、かすが先輩からは卵、市先輩からはタコウィンナーをもらった。

どっちも定番だな。


卵は味つけや形を整えるのが一番大変だということを、私は良く知っている。

いや、一度失敗して・・・。

何だろう、爆発した


タコウィンナーも意外と難しい。

私はそんなに手先が器用って訳でもないため、足は一苦労する。

タコは8本だってのに、この間12本になった。

ある意味凄い。



そんなことを考えながら、口を大きく開けた。




『うわっ、これ凄い美味しい!』





あまりの美味しさに感激し、つい頬に手を当ててしまう。

頬が落ちそうなほど、とはこのときに使う言葉なのだろうか。

考えた人、グッジョブ。


私が嬉しそうに笑みをこぼせば、二人はうれしそうに微笑んでくれた。

やっぱり二人とも綺麗だな・・・と実感した瞬間でした。あ、また作文。






「えーまじ!?誰だよソレ!俺にも紹介しろよ!」

『うぇッ!』





突然、どこかから男子の声が聞こえてきた。

驚いた私は、危うく箸を落としそうになる。

なんとか箸を受け取り、ほっとため息をついた。

全く、誰だよ!食事中はお静かに!

少しイラ、としながらも声が聞こえたほうに目をやった。









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