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□光は
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いなくなった
また、いなくなってしまった
この気持ち、知っている
だからこそ、分かりたくない
失くすのはもう嫌なのに
また失くしてしまうのだろうか
神様は、俺から全てを奪っていく
33:雨と風と炎と少女
「「「・・・」」」
カチャカチャ、と箸を進める音がする。
その部屋は、やけにしんとしていて、誰一人口を開こうとはしない。
昨日はあんなに騒がしかったのに、まるでそれは夢だったかのように、静か。
黙々と、皆が浮かない顔をしてご飯を口に入れていた。
幸村と紅が行方不明になってから2時間、台風が直撃。
もう、探すことは不可能だった。
この台風の中、2人は無事なのだろうか。
皆の頭の中はそのことでいっぱいだった。
バタバタバタバタッ
突然、この場の雰囲気に似つかわしくない音が聞こえてくる。
そう思ったら、大広間の襖がスパンッと開いた。
「政宗様!」
「愛姫・・・」
俯いていた政宗が、襖を開けた張本人、愛姫の方を向く。
愛姫の顔は、心配の色に染まっていた。
「政宗様、紅さんがいないって・・・行方不明って、どういうことですか!?」
「・・・どうもこうも、アイツが勝手な行動をしたうえの状況だ・・・。台風の中で探すのも危険だしな」
政宗の元へ駆け寄る愛姫。
箸を進めている政宗は、その箸を茶碗の上に置いて、愛姫の方を向いた。
「そんな・・・そんな・・・!愛のせいですわ!愛が、愛が・・・森で大切な物を落としたなんて言ったから・・・!」
顔に手をあて泣きじゃくる愛姫、皆が視線を向ける。
座り込んでしまった愛姫の背中を、政宗は静かに擦った。
「・・・どういうことだ?」
「先ほどのバーベキューの時に・・・そう話したのです・・・。まさか、探しに行くなんて・・・ッ!」
顔を政宗に向け、涙を流したまま愛姫はわっと泣いた。
政宗は背中を擦り続ける。
皆は、その話を聞いて再び俯いた。
慶次は、その様子をじっと見つめていた。
「・・・」
「・・・愛姫、確かにお前が言った事は失態かもしれねぇ・・・。だが・・・・探しに行った紅も紅だ」
政宗は、そう冷たく言い放った。
「紅さんは悪くないですわ!愛が悪いんですの!!」
泣きながら大声を上げる愛姫に、慶次はイライラをつのらせていた。
何故、あの時いなかった。
どうして、その話を話さなきゃならなかった。
頼るべきなのは、政宗ではないのか?
何故風舞に話す必要があった。
どうして、こんな時にアイツに話す必要があった?
どんどん疑問が浮かんでいく。
大体、初対面な風舞にそんな話をするのだ。
そんなことを考えながら、慶次は泣く愛姫と、そばにいる政宗を見ていた。
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