「この…ッ離せ変態ッ!!」
「イヤでーす」


カカシの腕に閉じ込められたまま気恥ずかしさを打ち消すように怒鳴りを上げる。
カカシはカカシで、先程あれだけの殺気を出していてた男とは思えない程間の抜けた声を出した。


心臓がドクドクと音を立て、騒がしく脈打っている。

未だ信じられない。
あのはたけカカシが、自分の事を好きだなんて。



「イルカ先生、あのね」


不意に背中へと回されている腕がその力を強めたのを感じた。
だがそれに反し、カカシの口から発せられた言葉は一転して消え入りそうな程弱々しいものに変わる。



「多分ね、ずっと前から先生の事好きだった。アンタが誰かに笑い掛けるの見るの、物凄く嫌だったもん」
「ずっと前、から…?」
「うん。他の奴等と同じ顔じゃイヤだって。俺だけに見せる顔を見たいって思ってたの。
でもアンタ態々義理だなんて言ってチョコ寄越すしさ…何か面白くなくって」



自覚こそしていなかった様だが、彼もまたそんなに以前から自分を意識していたのか。

カカシの無意識な嫉妬が気持ちを隠して渡したチョコレートのせいで歪な方向へと動きを変えてしまったらしい。
もしあの時自分が素直に想いを伝えていたなら、今とは全く違った道が待っていたのかもしれない。


思いも寄らない告白に暫し言葉を失う。
だが沈黙の意味を取り違えたのか、カカシが必死な様子で言葉を続けた。



「アンタにどれだけ酷い事したのかちゃんと分かってます。今更許して欲しいなんて言えた義理じゃないって事くらい分かってるんだけど…」


顔を上げ、もう一度鼻先にキスを落とす。


「でもアンタの事誰にも渡したくないよ。ねえ先生…どうしたら許してくれますか」



しゅんと下がった眉
不安の色が揺れる瞳

まるで叱られた子供みたいだ。
もし彼が犬だったらその耳は力を失くして垂れ下がっている事だろう。



これまでの数ヶ月、確かに辛い日々だった。
好きな相手に嫌われていると知りながら、好きだからこそ抱かれる事を拒否出来ずに。

だがカカシだけが悪い訳じゃない。
気持ちを告げる勇気の持てなかった、臆病者な自分のせいでもあるのだ。



カカシは憂色を湛えた瞳でじっとこちらを見つめている。

こんな不安げな顔を見るのも初めてだ。
今日だけで一体幾つの初めてがあるんだろう?


(何ともしおらしくなっちゃって…まるで別人だな)


余りの豹変振りに込み上げる笑いを抑えて、こほんと一つ咳払いした。


「カカシ先生、こんな時は何て言うんでしたっけ」
「え?あの、ええと…」
「アカデミー生も知ってますよ」


「あ……ゴメン、ナサイ?」


疑問系ながらも彼の口から聞く事の出来た謝罪の言葉。
よく出来ましたと笑顔で告げてやれば、泣きそうな顔でしがみ付いて来た。


「先生ごめんなさいっ!酷い事沢山言ったしヤっちゃいました!どうか許してっ」
「もういいです、分かりましたから。それに…」


わしゃわしゃと銀色の髪を撫でながらそこで一旦言葉を切った。
息を深く吸い込んで、あの日言えなかった想いを伝えよう。


「俺も、ずっと前から貴方の事が好きだったんです。なのに義理だなんて嘘吐いて…だからお互い様です」
「イルカ先生……ホントに…?」


「俺は、カカシ先生の事が好きです」



一瞬見開いた彼の瞳が直ぐに緩やかな弓を描き、目尻にきゅっと皺が寄る。
薄目を開けてぼんやりと見た夜よりも、何倍も優しくて嬉しそうな笑みを浮かべて。



「俺もイルカ先生が大好き!!」



そう言って、彼は俺の顔中にキスの雨を降らせた。




**********



互いの想いを確認しあった後、あっという間にベッドへと連れ去られた。
エアコンもつけず窓も開けていない室内は、二人の吐息も相まってさながらサウナの様だ。



「…っ、ぅ…」


敏感な部分を握り込まれ、零れそうになる声を必死に飲み込む。
ソコは直ぐにその形を淫らなモノに変え、カカシの手の中で濡れた音を立てていた。

ふと瞼に柔らかい感触がして目を開ける。
そこには咎める様なカカシの瞳があった。



「ダメ。声抑えないで」
「ぁっ…無理っ…です」
「それに何時も目瞑ってたよね。どうして?俺見るの嫌?」



追い詰める手は動かしたまま、拗ねた様に口を尖らせて問う。

白い陶器の様な肌はしっとりと汗ばみ、頬も淡く桜色に色付いて。
カカシから漂う男の色香に跳ね上がった胸を押さえ、ふるふると頭を振った。



「ならちゃんと俺を見て。アンタの声で名前を呼んでよ」
「あっ…じゃ、じゃあっ、俺もお願いが…あ…っ」
「なあに?どんな事?」



ずっと言いたくて、でも言えなかった事。


自分の知らぬ間に何処かへ行ってしまわないで
目が覚めるまで、ずっと隣に居て欲しい



尚も加えられる愛撫に翻弄されそうになりながら、切れ切れに何とか願いを伝えた。



「なぁんだそんな事ですか。俺、もうどんな時だって先生の側を離れませんから安心してイーヨ。だからさ」


カカシはニッコリと微笑むと、耳元に顔を寄せて囁いた。



「アンタを抱いてる俺をちゃんと見てて。そんでイイ声、聞かせてくださいネ」









「あぁっ…んっあっ」


脳髄を駆け上る快感
ぴちゃぴちゃと水っぽい音を立て、カカシガ厭らしくそそり立つ雄を食む。



「ん…甘いミルクが漏れてきた。先生、前と後ろ一緒にこうされるのスキだよね」



くっと奥へ入り込んだ指をくの字に曲げ、敏感な部分を掠めた。
ほんの少し触れられただけでもカカシに染められた身体は充分過ぎるほどの快感を拾ってしまう。
耳を塞ぎたくなるような甘い声を上げ、引いていく指を惜しむ様に締め付ける後口が恥ずかしかった。



「はぁ…っカカシ…っせんせぇ…ッ」
「ふふっ名前呼んで貰えるって何かスゴくイイね。ねえ…アンタのミルクセイキ、欲しくなっちゃった」
「あっやぁっ!ああ…ッ」



このまま飲み込まれてしまうのではと思う程強く吸い上げられ、堪らず彼の口内へと精を放つ。
顔を上げたカカシの口元は受け止め切れなかった白濁に濡れ、赤い舌先がそれをぺろりと舐め取った。



「イルカせんせの、甘くってスゴク美味しいよ」
「や…ぁっ」



耳元に息を吹きかける様に囁かれ、新しい快感が背筋を走る。


優しく髪を撫ぜる指先
愛しげに細められる瞳


ああ、愛されていると思ってしまって良いだろうか



「先生が好き。大好きだよ。俺だけのアンタでいて」

「ぁぁっ―!!」



彼が与えてくれるものならば躯を裂かれる痛みさえ愛おしい

知らなかった
想いの通じ合った相手と抱き合う事が、こんなにも気持ち良い事だなんて



「はぁ…っあんッカカ…ッ」
「センセのナカ、熱くて溶けちゃいそうだ…」



奥深く入り込む彼の熱も、交じり合う唾液の味も。
全てがこの身へリアルに刻み込まれて、夢じゃないと教えてくれる。

身体中が嬉しいと、歓喜の叫びを上げている



「あっカカシさ…っ!」
「は…っイキそ」


一層の突き上げに涙で視界がぼやける。
最奥に灼熱が注ぎ込まれるのを感じ、自分も同時に二度目の白濁を吐き出した。




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