甘い物はキライ。
口の中に纏わり付く様なあの感じがスゴク嫌だ。



だけど


あの人は何処も彼処も

酔いそうな程に酷く、



甘い。




□□ ミルクセイキ □□




side:K

あの人と知り合って初めての2月。

天ぷらと並び甘い物がこの世で一番嫌いな俺に、
あの人は何時もの笑顔で茶色の塊を寄越した。




『勿論、義理ですよ』




笑いながらそう付け加えた彼に、
何故だかとっても腹が立って。




だから3月のお返しの日。
俺は嫌がる彼を押さえ付け、俺の熱を差し上げた。







「ホラ、もっと足開いてよセンセ。奥まで入らないデショ」


初めの頃は必死の抵抗を見せたイルカも、諦めたのか最近では素直に身体を明渡してくれる。
目をぎゅっと瞑り、零れそうになる声を押さえ込むその表情は酷く扇情的で、決してこちらを見ようとしない態度も実に征服欲を満たしてくれた。




「…っ、も、ヤですッ! 勘弁してく…ださ…っ」
「嘘言わなーいの。ココこんなになってるのに」

「あっ、やあぁぁッ!」




何度か吐き出したモノでヌルつく其処は軽く先端を押し当てただけでも直に俺を飲み込もうと蠢いて絡みついてくる。
後口に請われるまま奥を突いてやれば、イルカは背中を反らして普段は決して出さない声を上げた。


その痴態に笑みを浮かべてイルカの前を扱き上げていた手を止める。
動かす腰はそのまま、彼の先走りで濡れた指をぺろりと舐めた。



口の中に広がる青みと、もう一つ。




(甘い…)





イルカの体液は何もかもが甘い。
唾液も精液も、本来は塩辛い筈の涙でさえも。



もっともっと。
もっと欲しい。


甘い物なんてキライな筈なのに。



何故だろう。
どうしても、甘い彼が欲しくなる。




「キモチイィんでしょ?こんなに締め付けちゃってさ」
「よくな…ッ抜いっ」
「素直じゃナイねぇ」




初めは嫌がらせの積りだった。
けれど気付けばすっかりイルカの身体に嵌っている自分が居た。

イルカを抱く様になってからは馴染みの女の所へも、それこそ花街でさえも行かなくなって。
もう何度、イルカと身体を繋げたかなんて分からない。



何度抱いても彼の甘さにクラクラする。
まるで酔っているかの様な浮遊感。





「やッ、んんッ!!」





彼の唾液を吸い尽くすように接吻けて。
未だ足りないと舌を伸ばして絡み付ける。



花の蜜とも、砂糖菓子とも違う甘さ。

彼固有の、彼の味。




「アンタはさ、何もかもが甘いよね。性格も仕事も。それに、知ってた?」


吐き出された白い液体を掬ってイルカの唇に塗り付けた。




「アンタのコレも、モノスゴク甘いんだよ?」



必死に閉じようとする口に舌を捻じ込み、イルカの口内で彼の唾液と精液とを混ぜ合わせて。
口の端から零れそうになるのも舐め取って、全てを味わい尽くす。


一滴だって、余さぬ様に。




「ね、甘いデショ?そーねぇ、例えるなら…」





彼の精液は、ミルクセイキ。




「…っはぁ…馬鹿、ですかアンタ…っ」
「だって白くて甘いじゃない」




荒い息のまま涙目で睨み付けるのがあんまりにも小憎たらしいものだから。
今夜は未だ、開放してあげられそうに無い。




だって、もっと欲しいんだ


胸焼けしそうな位に甘ったるくて
キライな筈の、甘い君が――。




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