海馬総受け(旧)
□嘘から出たハプニング?
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「あ、俺忘れ物したから先に行ってて!二人とも!!」
モクバはそう言うと、車に向かう二人を残して部屋へと戻ってしまう。
結局、二人で玄関まで向かう城之内と海馬。
何を話せばいいのかわからなくて、黙々と歩く城之内。
ちらりと横を歩く海馬に目を移すと、海馬の端整な顔が瞳に映る。
確かに、黙ってればすごい美人だ。色は白いし、髪はサラサラ。薄い唇は赤くって。さらに、横を向いててもわかるブルーアイズ。
ここで城之内は一つ実験をしてみることにする。
そっと、海馬の手に触れたのだ。
それからきゅっと握ってみる。
これで、もしも海馬が俺の恋人じゃなかったら、振り解かれるだろう。そうしたらさっさと家に帰って医者に見てもらったほうがまだマシだ。
そう考えていた城之内だったが、現実はそう上手くはいかなかった。
きゅっと握った手を、握り返されたのだ。
え、マジで??
そう思った城之内は横目で海馬を盗み見る。
その耳は非常に赤く、城之内と目が合えば、ぷいと逸らされた。
だが、手はそのまま。
か、可愛い……。
拗ねたような、照れているような顔が可愛いと思った。
………っは!?
お、落ち着け、俺!!!
海馬が可愛いなんて、幻影だ!!
あのDEATH―Tの時を思い出せ!!
他にも色々あるじゃねえか!!
いっつもいっつも俺のことを凡骨扱いして、さらに負け犬だとか実験ねずみとかいいやがった!!!
そう、海馬はやな奴なんだよ!!!
そうやって過去の海馬を思い出すことによって、城之内は頭の中によぎった考えを一生懸命押し出した。
城之内がおかしい。
何がおかしいのかはわからないが、何かが違う。
海馬コーポレーションの中など知っているはずなのにも関わらず、幾度か道を間違えた。
「城之内、貴様そちらに行ってどうする」
「あ、あれ??…えっと、そ、そうだよな〜。まだ頭がボーっとしてんのかな〜」
こういったことが2,3回。
さらに、車に乗り込む時だ。
送り迎えはベンツなのだが、見慣れたはずのそれに感嘆を漏らしていた。
そして、何よりも解せない行動。
海馬が近寄れば、城之内は遠ざかった。
試しに更に近寄ってみるが、怯えたように身を硬くした。
「城之内?……酔ったのか?」
城之内が車で酔うことなど聞いたことは無かったが、このおかしな態度はそのせいなのだろうか。
だが、城之内はぶんぶんと首を振った。
「ぜ、全然っ!!元気だぜ!?」
だが、そういう声もどこか上擦っていて。
海馬はその明らかにおかしな態度に不信感を募らせていったのだった。