海馬総受け(旧)
□無力
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この家に来てから……
平穏など無かった。
あったのは
絶望だけだった
暗い部屋、ベッドの中で瀬人は自らを抱きしめるようにして眠っていた。
眠りについたのはつい先程。
パジャマに滲む、赤い血のせいで中々寝つけれなかった。
意識は眠りを欲しているのに、身体がそれを拒む。
ズキズキと痛む背中。
何度も何度も鞭で傷つけられ
塞がることのない傷跡
それは悲鳴を上げていた。
寝返りを打つことも出来ず
瀬人は己の無力さにシーツをかき集め、握り締めて震えた。
でも、
涙は出ない。
そうなったのはいつ頃からか。
この屋敷に来た当初、
押し付けられた英才教育
帝王学
容赦ない体罰
突きつけられた
現実
貴様には何も出来ない
お前は無力なのだと
そう教えられた
幾度も幾度も──
初めて
剛三郎に
抱かれた日
生まれて初めて
泣いた。
声を上げて
悲鳴を上げながら
絶望に堕ちた
それでも
それでも今の自分がいるのは
復讐のため。
そして、唯一の愛
モクバのためだった
弟を守らなければ
この男から──
それから幾夜も剛三郎は瀬人を抱いた
自分の上で下卑た嘲笑いを漏らしながら腰を振るこの男を見ながら
いつか──
……してやる
そう思った。