海馬総受け(旧)
□偽装愛
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頭がくらくらする……
手も足も痺れて声すら出ない
ここは……どこだ
薄暗い部屋の中、海馬瀬人は目覚めた。
見知らぬ天井、重い身体。
激しい頭痛を堪えながら、なんとか起き上がろうとする。
が、思い通りに動けないことにすぐに気づく。
腕が、肩より下にさがらないのだ。頭上でガチャガチャと音が聞こえる。
何とか身体を横に向け、頭上を確認する。
「なっ…!?」
自分の両手には手錠。
一瞬で自分の状況を知る。
それだけでは無かった。
ベッドに繋がれた手錠。そこからさらにもう一本、鎖が伸びていた。それは少し長く、自分の首元へと続いていた。
思わず手で確認しようとするが、手錠の鎖が短く、動きが制限されてしまう。
慌てて上体を上へと移動させ、手元へと自分の首を寄せようとする。
だが、確認せずともわかっていた。首を絞める何か。
手で触ってみて、確信へと変わる。
首輪
そこから伸びた鎖。
うつ伏せの状態から、慌てて身体を起こそうとする。だが、足までもが上がらない。
恐る恐る目をやるとそこにも鎖。
足枷
「ひっ!」
引っ張っても引っ張っても、外れることは無かった。
あまりにも身動きが取れない状態は、瀬人にとって、恐怖以外の何ものでもなかった。
今一度、部屋を観察する。
窓も無く、唯一の逃げ道であろう扉は今は閉まっている。それだけならば何とか次の状況を考えれたかもしれない。
だが、目に見えたのは、ドアに取り付けられたいくつもの鍵。
そして、ベッドの横にあったのは、拘束具。口枷、鎖、縄、そして鞭。
一瞬で悟る。ここでこれから何が行われるのか。
そして頭に広がる恐怖。
そしてパニック。
「うああっ……うああ!!」
瀬人は無我夢中で手錠を引っ張った。
だが、人間の力で鉄が切れるわけも無く、ただ無常にガチャガチャと音が響くだけだ。
それでも瀬人はやめることなく、暴れ続けた。
そのうち手錠に繋がれたところから流れる血。
痛みを感じている暇など無かった。
ただ、そこから逃げなければ。
頭に浮かぶのはそればかりであった。
ガチャガチャ
「ひっ!!」
突然聞こえた自分のものとは違う音。
後ろを振り向く。今のはドアの音。
ガコッガコッと鍵の外れていく音。一つ一つが外れるたびに恐怖が身体全体を支配して、息も出来なくなる。
ギギ……
ついに扉が開かれた。
そこから入ってきたのは
「ち、父上……」
口の端に気持ちの悪い笑みを浮かべた、瀬人の義父である剛三郎であった。