海馬総受け(旧)
□貢物
1ページ/4ページ
「ふんふんふ〜ん♪」
城之内はスキップで童美野町を歩いていた。
時刻は11時になろうとしている。
ちなみに今日は平日だ。なのに何故学校に行っていないのか。それは最愛の恋人、海馬に会いに行くためだ。
可愛い理由で拗ねてしまっていた海馬をからかってしまったがために姫のご機嫌を損ねてしまったのだ。
いつもなら海馬が怒っていると、それだけでご機嫌とりに四苦八苦していた城之内だが、今回は本当に海馬の拗ねた理由が嬉しかったので、足取りも軽い。
さて、どうやって姫のご機嫌を直していただこっかな〜
おそらく、城之内が海馬の目の前で土下座をして平謝りすればそれが一番海馬の許しを得やすいと思われるが、そんなことに城之内は気づいていない。
う〜ん。何か貢物でも買っていくか?
ぽん、と頭に浮かんだ名案に自分を褒めつつも、海馬は何が好きだったか、一生懸命思い出そうとする。
たしか……、おでんは駄目だったよな〜。…美味いんだけどな。
まあ俺もコンビニのは好きじゃないけどな。
道を歩きながらぶつぶつ。
仕事柄コーヒーよく飲んでるけど、すっごく好きって感じじゃなさそうだし〜。
一緒にケーキとか出てきても殆ど手つけないしな。
そいや前に疲れてる身体には甘いものがいいっていうの聞いて、海馬の口に無理矢理ケーキ突っ込んだら…グーで殴られたな………。
そんなに甘いもの嫌いか?
別段欲しくもないのに無理矢理口に突っ込まれたら誰でも怒るだろう。城之内はそれにも気づかない。
甘いものが駄目なら辛いのはどうだ!?
ん〜確かキムチ鍋食べたいって言ったら却下されたっけ。
何だ…辛いのも駄目かよ。
単に海馬は次の日の商談で口が匂うのを嫌って、拒否したのだということにやはり城之内は気づかない。
……あいつの好きなものって何だよ!!
付き合いだして長いとはいえないが、誰よりも傍にいたのは自分だ。
一番はモクバだが、あいつは兄弟だから外しておく。
自分が一番傍にいたのに海馬の好きなものさえわからない。
城之内は少し…いや、激しい自己嫌悪に陥った。
だって、あいつの好きなものって言ったら、ブルーアイズだろ。そんなもん手に入れられないし。というかあいつが世界に3枚しかないカード全ての所有者だし。
その次に好きって言ったら……
遊戯とのデュエル。
あいつ遊戯とデュエルしてるときは心底楽しそうだもんな〜。
めっちゃくちゃ笑うし。ワハハハハ!!とかって。
俺とデュエルしても全然楽しそうじゃないしな………。
……やば。自分で言ってて悲しくなってきたぜ。
城之内はいつの間にか止めてしまっていた足を動かし始める。
だが、もう学校を出てきたときのような元気は全くもって無くなっていた。
いやいや、元気出せ俺!!海馬は俺が好きなんだ!自身持て俺!!
涙ぐましく自分を応援しながら歩いていた城之内の目にあるものが飛び込んでくる。
……あ。
これだ!!!!!
ぴかーん!と閃いた城之内は一目散にその店を目掛けて走っていった。