オッス。皆元気してっか?
城之内克也だぜ!
いきなりで悪いんだけどさぁ、ちょっと聞いてくんねぇ?
今日学校で、杏子たち女子のお喋りが聞こえてきたんだけどよー、それがまた色恋沙汰でさー。
ま、その…なんだ。
オレにも、こい…びと…ってやつはい、いたりする!
あ、聞きてぇか!?
今回だけだかんなー?
えっと、オレの恋人は、海馬瀬人っていって、えらい大企業の社長してて、すっげー美人で、性格はオレ様。
そのくせ寂しがり屋で、でもそんなとこを見られないようにって、隠してたりする、すっげー可愛いやつだ。
この間もさー、オレと海馬が両方忙しくってしばらくあってなくて。そんな時に久しぶりに会ったら、海馬のヤツ、珍しく甘えてきてよぉ。
オレの隣にちょこんって座って、喋らねぇくせに、構えオーラだしてんだもんなー。
そのくせどこまでも自分が優位でいたいっつーのがまた海馬らしくってよー!
……え? 話が逸れてる?
あ、ワリィワリィ。
で、杏子たちの話によると、
「彼氏と一緒に観覧車に乗ってさー、自分は高所恐怖症で〜。で、そんな私に彼氏が聞いてくるのよ。お前高所恐怖症だっけ。大丈夫か?オレの隣にくるか?…って!!」
「きゃー、それいい〜。ラブラブだよね〜v」
……正直、オレには女子の考えてることがよくわかんねぇ。
そもそも、高所恐怖症なら乗るなっつの。
そんなことを考えながら聞いてたんだけどよ、えらく杏子たちがフィーバー(古!)してっから、ついつい聞いちまったんだよなー。
「遊園地だと〜、お化け屋敷なんかもいいよね!『なんだよ、こわがりだな〜』とかいってさりげなく手を繋いでくれたりしたらもうっ!」
「じゃあ、場所変わって〜、雨が降ってるっていう設定で〜、傘も持たずに濡れてる私を見つけて〜、ぎゅってしてくれるとか!」
なーんか色々突っ込むトコ沢山あったけど、オレも海馬の彼氏としては、アイツに寂しい思いをさせちゃいけねぇよなーなんて思って。
杏子たちがこんだけ騒いでんだったら、これをオレがしたら海馬も喜ぶのかなーなんて考えてみた。
えっと?
まずは観覧車だっけか。
オレと海馬が観覧車で……
って!!ありえねぇ!!
つーか、まず海馬と遊園地なんて行けるのか!?
「海馬、遊園地行こうぜ!」
「却下」
…って、こんな風に言われんのがオチだぜ!
あ、しかもオレが高所恐怖症だとかいったら、めちゃめちゃ笑われそう…。
「フハハハ!!犬のくせに高所が怖いなどと感じる脳みそが貴様にもあったのだな!!感心したぞ!!」
…………あー、ありえる。
すんげぇありえる。
駄目だ!却下却下!
あー、次は…お化け屋敷……。
はい、無理!
んな、お化け屋敷なんて入るくらいなら海馬に笑われた方がマシだっつーの。
あー、次は何だ?
雨の日に…だっけか?
……アイツが雨に濡れてるなんて、ありえねぇ。
車移動じゃねぇか!!
いつ雨に濡れるんだよ!!
つか、このテーマの意味がわかんねぇ!
普通濡れまくってる相手をいきなり抱き締めたりしねぇだろ!?
…しねぇよな?
まぁ、百歩譲って海馬が濡れてたとする。
オレが走っていって、海馬をぎゅっと抱き締める。
きっと海馬の第一声は…
「な、何をするっ!!どさくさに紛れて抱きつくな!この、凡骨が!!というより、貴様の傘をよこせぇぇ!!」
……ってオチ。
え、なんかオレ、可哀想じゃねぇ?
自分で言ってて悲しくなってきたんだけど。
あー、あと他にも言ってたな。
『寒い日に〜、そっとコートを貸してくれたりとか〜』
『あ、いいね、それ〜!で、そのコートがだぼだぼで、『可愛いな、お前』とかとか〜』
こ、これをオレと海馬で考えると〜
………オレ、海馬にコートなんて貸せれねぇ…。
だって、あいつの方がいいコート着てんじゃねぇか。
へたすりゃオレの方が彼女になっちまうんじゃねぇの!?
まぁ、他にも色々と杏子たちが喋ってたことを、オレと海馬で考えてみたんだけど、どれもなんかオレが可哀想な展開になっちまって…。
あー、自信無くすぜ…。
「何を考えている、城之内」
「…っ!?」
あ、やべぇやべぇ、今海馬んちに来てたんだっけか。
ちーっとばかしトリップしちまってたぜ。
うわ、海馬がじとーって効果音つきで睨んでくるぜ。
「あー、仕事終わったのか?」
その視線に耐えれなかったオレは、目の前にあった紅茶に手を伸ばす。…冷めてる…けどうま。
海馬はオレの問いには答えず、まだオレのことを見てるぜ…。
オレがその視線にいたたまれなくなった頃、海馬が口を開いた。
「このオレを前にしてトリップするとはいい度胸だな、凡骨」
「な、なにをー!?凡骨っていうな!」
……って、いつものオレなら怒ってただろう。でもな、そうもいかなかった…んだよな。
だってさ〜、海馬のヤツ、言ってることはオレ様だけどよ〜、唇とんがらせて、拗ねてるみたいな声出してんだぜ!?
そこまで考えてオレはあることに気がついた。
あ、そいえば海馬と会ったのって、すんげー久しぶりだったってコト。
オレも海馬も忙しくってさ。海馬は新しいプロジェクトが始動したとか言ってたし、オレもバイト仲間が緊急入院しちまってよー。その穴埋めんのにてんやわんやでさ〜。
ひーふーみー…。あ、3週間ぶり…?
チロ、と海馬を見たら、じとーって見てた視線は外れて。海馬はぷいって横向いてるぜ。
あー、コレ知ってる。
拗ねてんだろv
久しぶりに二人っきりで会ってるってのに、オレがぼーっと考えごとしてっから。
「いっひっひ」
全然素直じゃねぇし、すぐ怒るし、杏子たちがいうようならぶらぶはできねぇけど、たまーにこういうとこがあるから海馬は可愛い。
我儘な女王さまだけど、しょーがねぇ。好きになっちまったんだもんな♪
「ったく、寂しいなら寂しいって言えよー海馬♪」
ガッチャーン!!!
うっお、あ、あ、あ、あ危ねぇ!!!
か、海馬のヤツカップ投げてきやがった!
オレのすさまじいまでの素晴らしい運動神経が無かったら今頃顔面血みどろだぜ!?
しかもアレ、…マイルドセブンじゃねぇか…。もったいね。
城之内くん、それはタバコです。正しくはマイセンです(笑)
以前メイドさんに聞いたらしい。でも音でしか覚えてない(ブランドには興味ない)から、似た言葉がぽろっとでたりする。
あー、海馬くんが想像以上に城之内くんのこと好きだったりするといいですね。萌えます!
敏い城之内くんよりちょっと鈍感で天然だといい。
でもやっぱり海馬くんが女王さま(笑)