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□甘い菓子
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【Hide & Seek】



「どこにいるの?」

しばらくの沈黙のあと,僕は何度目かの質問を繰り返した。

「ねぇ,どこ?」

また少し経ってから尋ねる。

「出ておいでよ」

声をかけながら歩き回っていた僕は,そこで一旦足を止めた。

「さて」

唯一見てなかった寝室のドアを開けると,やはり誰もいなかった。
……いや,いないわけじゃない。

隠れてるだけ。
潜んでいるだけ。

息を殺して。
声をひそめて。

「行くよ」

僕は躊躇いなくクローゼットの前へ歩みを進めた。
なぜなら,僅かに透き間が空いているから。

「もう怒ってないから」
「…………」

中から微かな物音が聞こえただけで,確かな返事はない。

「だから,出ておいで」
「…………」

……まだ駄目か。
ゆっくりと息をはく。

「……分かった。そういうことなら,好きにしなよ」

そして,寝室を出ようときびすを返したところで,


「――いやっ!!」


背中に,衝撃が思い切りぶつかった。

「ちょっと痛かった」
「……ごめんなさい」

嘘だよ,と微笑む。
彼女はもう一度「ごめんなさい」と震える声で呟いた


この空気にこっちが耐えきれず,僕は彼女と向き合った。

泣きはらした瞳は,それでもまだ赤みが引かず,潤んだまま。

僕を見てまた溜まりだしたその水を,精一杯優しく拭う。



「見つけた」





―――――――――――――

かくれんぼっていったら普通押入れですよね!
ていうかクローゼットなんて洒落たもん高橋家にはない!



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