Log
□甘い菓子
13ページ/48ページ
▽11/1
【Hide & Seek】
「どこにいるの?」
しばらくの沈黙のあと,僕は何度目かの質問を繰り返した。
「ねぇ,どこ?」
また少し経ってから尋ねる。
「出ておいでよ」
声をかけながら歩き回っていた僕は,そこで一旦足を止めた。
「さて」
唯一見てなかった寝室のドアを開けると,やはり誰もいなかった。
……いや,いないわけじゃない。
隠れてるだけ。
潜んでいるだけ。
息を殺して。
声をひそめて。
「行くよ」
僕は躊躇いなくクローゼットの前へ歩みを進めた。
なぜなら,僅かに透き間が空いているから。
「もう怒ってないから」
「…………」
中から微かな物音が聞こえただけで,確かな返事はない。
「だから,出ておいで」
「…………」
……まだ駄目か。
ゆっくりと息をはく。
「……分かった。そういうことなら,好きにしなよ」
そして,寝室を出ようときびすを返したところで,
「――いやっ!!」
背中に,衝撃が思い切りぶつかった。
「ちょっと痛かった」
「……ごめんなさい」
嘘だよ,と微笑む。
彼女はもう一度「ごめんなさい」と震える声で呟いた
。
この空気にこっちが耐えきれず,僕は彼女と向き合った。
泣きはらした瞳は,それでもまだ赤みが引かず,潤んだまま。
僕を見てまた溜まりだしたその水を,精一杯優しく拭う。
「見つけた」
―――――――――――――
かくれんぼっていったら普通押入れですよね!
ていうかクローゼットなんて洒落たもん高橋家にはない!
よかったら拍手をどうぞ...★