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□another dead story
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「……何で,君が」

思わず問いかけていた野比のび太に,源シズカは妖艶に微笑んだ。

「さぁ,なんでかしら」

のび太は彼女の足元にできた血の海に浮かぶそれを呆然と見つめる。
脚が震えて仕方ない。
呼吸が浅く早くなっていた。

「どうしてこんな酷いことを……」
「酷いですって?」

シズカは微かにすら動かないそれ――ついさっきまで元気に自分と遊んでいた,剛田タケシの死体を見下ろして,嘲笑った。
そこにはもう,純粋な少女の面影は残されていない。

「のび太さん。あなた,散々この人に虐められてたじゃない。むしろいい気味だって思って良いくらいじゃないかしら」
「そんなこと思うはずがないだろ!」

あらそう,とつまらなさそうに返す。

「ともかく,これで私の仕事は終わり」

シズカは手にしていたナイフをポケットにしまい,のび太に背を向けた。

「ちょっ,待――っ!」

とっさに捕まえようと右手を伸ばすと,


「ダメだよ」


「!?」

パァン,と乾いた銃声が響いた。

「――いッ!!」

右手に激痛が走るのとそこが血塗れになるのはほぼ同時だった。
のび太は痛みに耐えながら,声が聞こえた方を見た。

源シズカ――ではない。

「……セワシくん」
「あは。久しぶり,おじいちゃん」

シズカと違って無邪気な笑みだった。

「遅いわよ,セワシくん」
「ごめーん」

彼はピストルを持ったままシズカの元へ駆けていく。

「ちょっと野暮用があってさ」

胸騒ぎがのび太を襲う。
もはや嫌な予感しかしない。
のび太は左手でポケットから携帯を取り出し,記憶していた11桁のナンバーをプッシュした。通話ボタンを押す。

(出ろ……早く……早く出てくれ!!)

「出来杉ならもう死んでるよ」

繰り返し流れるコール音にピリオドを打ち付けるように,セワシははっきりと言った。

「ていうか今殺してきたし」
「…………あ,そう」

ため息を吐いて,のび太は電源ボタンを押した。
もう駄目だ。
そんな言葉が頭をよぎる。

「――なぁ」

そのまま去ろうとしていた2人に問いかけた。

「君たちの目的は,一体何なんだよ」

2人は振り返り,

「――ボクたちはただ,知りたいだけだよ」
「だから,一体何を!」

「スネ夫さんが自殺した訳」

濁そうとしたセワシに食ってかかったのび太を制すように,シズカははっきりと答えた。
だからのび太は驚愕した。

「スネ夫が……自殺だった?」
「そう」
「でもあれは,」
「事故だったって言いたいんでしょう?」
「でも違うんだよ。彼は自殺だった」

そして2人は再び背を向ける。

「それじゃあね,おじいちゃん」
「さよなら,のび太さん」

「待っ――」

のび太の叫びも虚しく,彼らは闇の中に消えた。

残された少年は,右手の痛みに耐えながら悟っていた。

もうあの頃には戻れないのだと――。





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*次はあとがきです



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