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□BL・GL
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【独りの誘惑へ跡】



疲れた。

馬鹿な男どもをおだてて上手く働かせるのも、そう簡単にはいかない。
――もし自分がもっと男に好意的だったなら、今よりかは楽にことが進められていたかもしれない。
でも、そんなの無理な話。

「……嫌いなものは嫌いなんだよ」

吐き出すように呟いて、自宅の鍵を出す。
キーホルダーの鈴が軽やかに鳴る。
鍵を開けると、誰もいないはずのリビングの明かりがついていた。
消し忘れてたのかな。
思わず少し眉をひそめながら靴を脱ぐ。
すると、足音がした。

「おかえりなさい」

にっこり笑った彼女。

「……来るのは明日の朝じゃなかったっけ?」

ただいまは言わずに彼女を抜いてキッチンへ向かう。
何か飲み物が欲しい。

「そうなんだけど……どうしても今日会いたくて」
「あぁそう」
「だめだった?」
「別に」

訊いといて何だけど、どうでもいい。

「で?」
「え?」

ビール缶を空けて、一口含む。

「その格好は何のつもりなわけ?」

私が言ったその格好とは、大きすぎてサイズのあっていないシャツ一枚を胸元を大きく開けてだらしなく着た今の彼女の格好のこと。

「しかもそれ、私のパジ
ャマだよね?」

今朝、ベッドの上に脱ぎっぱなしにしてたはずなんだけど。

「なんであんたが着てんの」

彼女は緩い笑顔を崩さないまま「寂しかったから」と答えた。

「会いたくて来たのに、まだ帰ってなくて、ベッドのとこ行ったらこれがあって、葵の匂いがして、耐えられなくて、着ちゃった」

えへ、とえくぼを作って、余った袖をぷらぷらさせる。
寂しかったら素っ裸の上に好きな人のシャツ着る女が目の前にいる現実は、かなり滑稽だ。

「これ着てると、すごいよ、葵にぎゅってされてるみたいなの」

私、そんなに優しく抱きしめたことあったっけ。
なんとか思い出してみるけど、心当たりはない。
そうしてるうちに、缶の中身はもう大分なくなった。

「ご飯は?」
「いらない。それより――」

彼女は私に近付いてきて、

「ベッド行こうよ」

腰に手を回すように抱きついてきた。

「がまんできない」

上目遣いに私を伺う。
きゅっと背中のジャケットを掴まれた。

「……はぁ」

めんどくさいなぁ。
こっちは仕事で疲れてんのに。
何平らな胸押しつけてんだよ。
そんなことで煽ったつもり?

大体さ、そんなシャツ着てる意味ないし。
全部透けて
んの。
どうせそれも確信犯なんでしょ?

発情期の淫乱猫が。

「ちっ」

私は分かりやすく舌打ちして、最後のビールを飲み干す。
まだ冷たい。
缶を置いて、

「あぅっ!」

私のシャツから覗く彼女の白く細い首元に噛み付いた。
赤い跡が付く。
満足。

「ね、ベッドに行かなくていいの?」
「めんどい」

ジャケットを脱ぐ。
それから思い切り、彼女のことなんか思いやりもせずに固い床に押し倒した。

「ここでしよ」





――――――――――――――

男前×ヤンデレが書きたかったんだけど、あんま病んでないね(;・∀・)
次はもうちょっとイっちゃってる話をこの2人で書きたい!



よかったら拍手をどうぞ...



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