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□BL・GL
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【キスもいいけど】



あれ。
ここにもいない。

「遥さん?」

まるで狐に包まれたような感じだ。
だってキッチンにもリビングにもいなければ、返事もないんだから。

うーん、どこ行ったんだろう。
せっかく美味しいコーヒー淹れたのに。

首を傾げながら、まだ見てない最後の部屋――できるだけ入らないようにしてた、仕事部屋兼書斎の前まで来た。

「遥さん、いる?」

声をかけてから、控えめなノック。
けれど返事はない。
静かに開けると、やっぱり彼女がいた。

椅子に座ったまま、パソコンのキーボードに手を置いて、微動だにせず、

「……え、」

爆睡してる。
そりゃ返事もないよね。

「もしもーし、遥さーん」

そばにしゃがんで下から覗き込んで見るけど、全然気付いてくれない。
……つまんないなぁ。
コーヒー冷めちゃうんだけど。でも起こすのも可哀想だし。
めったに見られない無防備な横顔をもっと見ていたいって下心も、まぁ、なくないけど。

ふと、彼女の耳元が目についた。

くすぐられるいたずら心。

「寝てる……よね」

私は落ち掛けていた髪をそっと指で耳にかけて、触れるくらい近くに唇を寄せる。
シャンプーの香りに、少しドキドキする。

「は、る、か、さ、ん」

あえてゆっくり、吐息まじりのいい声(自分的に)で呼んでみた。

「――――ん」

お。
反応アリ。

もう一度呼んでみると、形のいい眉が悩ましげに寄せられた。
なんか、ちょっと楽しいかも。
今日ぐらいは、ちょっとだけ調子に乗っていいかな。
私はまた耳に近づいて、

ぺろ、と小さく舐めてみた。

「ひゃっ」
「あ」

起きちゃった。

「おはよ」
「あ、あああああなた何して」
「目、冷めたでしょ?」

にっこり笑ってみせる。
真っ赤な顔して舐められた耳を押さえてる遥さんは、反則なくらい可愛い。

「キッチンおいで。コーヒーできてるよ」
「え、あ、うん」

少し落ち着いたらしい。
せっかくだから、もうちょっとからかおう。

「遥さんの寝顔、奪っちゃったー」
「――――ッ!!」

熟れたトマトになった遥さんを置いて私は仕事部屋兼書斎を出た。
ほんと、可愛いんだから。

けど、うん。

無理はしないようにちゃんと言っておかなくちゃ。





――――――――――――――

あれー?おかしいな。
もっとがっつり舐める予定だったんだけどなぁ。



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