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□BL・GL
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【be tempt】



最近、放課後が憂鬱すぎてやばい。
どれくらい憂鬱かって言うと、――もういっそ、死にたいくらい。

「こんにちは」

そしてその元凶は、目の前でにっこり微笑む彼自身なわけで。
たまらず、僕は二酸化炭素濃度の高いため息を吐いた。

「……何か用ですか」
「用がないと来ちゃ駄目なの?」

ぼそりと尋ねると、逆に聞き返された。
――面倒臭い。
本心は声に出さず小テストの採点を続ける。
彼はいつものように、勝手に椅子を持って来て僕の真向かいになるよう座った。

「ねぇ、先生」
「……はい」
「大好き」

彼はそう言って、えへ、と口角を上げる。
もし女の子にそんな風に笑いかけられたら、そりゃ多少は嬉しいけど、生憎、男にそうされて喜ぶ性癖を僕は持ち合わせていなかった。
ただ機械的にペンを動かしながら、僕は「あの、」と口を開く。

「君は、こんな僕の、何がそんなにいいんですか?」

口下手で、同じくらい人付き合いも下手くそだし、着ているスーツも安くてダサいやつで、髪も伸ばしっぱなしの、同じ職場の先生方にも近寄りがたいと陰で言われている僕なのに、彼は毎放課会いに来る。
そんな彼の気持ちが、僕にはさっぱり分からなかった。
分からなさ過ぎて、気持ち悪いとさえ思う。
これ以上近づいて欲しくないと、強く思っている。

しばらく沈黙が続き、僕らの間にはペンの音しかなかった。
ふと顔を上げると、彼の顔はすぐそこにあった。
机に身を乗り出してきたんだと気付くのに五秒くらいかかった。
近い。

「俺、知ってるんだよ」

僕を見つめる両目が細まって、唇が妖艶に動く。
吐息まじりの囁きに、息を呑みそうになる。
彼の右手が僕の首に触れた。

「ここでこうやって呼吸をしてるあなたが、本当のあなたじゃないってこと。全然、これっぽちも、あなたじゃないってこと」

俺、知ってるんだよ。
彼は繰り返しながら右手をゆっくり這わせ、そのままネクタイにたどり着いたと思ったら、器用に片手で結び目を緩めてきた。
その手を払いのけたい衝動。
その声に誘われてしまいたい欲求。
二つの感情が中でせめぎ合う。

「――ねぇ、先生」

「今ここで、本当のあなたを教えてよ」

結び目から引っ込めた手で、今度は自分のシャツのボタンを外し始めた。

「俺だけに、刻んで」

そこから除く白く細い首筋が決定打となった。
僕は彼の肩をつかんで思い切り机に押し倒し、中途半端に緩まれたネクタイを引きちぎるようにほどいてその辺に放り投げた。
やっぱり痛かったのか、彼は少し顔をしかめていたけれど、それでも俺を見ると微笑んだ。
――はっ。

「痛めつけられて笑うなんて、何お前、マゾなの?」

鬱陶しい前髪を無造作にかきあげながら気持ち悪、と吐き捨ててやったけど、――どうやら本当にそうらしい。
彼は今までで一番嬉しそうな表情をしていた。
このまま死んでも構わない、とでも言い出しそうな笑顔だった。
そして両手を僕の首に回してきた。

「もっと言って、先生」
「…………」
「もっともっと酷いこと言って、酷いことして、」
「…………」
「俺のこと、めちゃめちゃにしてください」
「…………気持ち悪」

もう一度だけ蔑んで、僕ははだけたシャツから除く白に噛み付いた。





――――――――――――――

ついったーで「えろくてドMな受けに隠れドSのノンケ攻めが誘惑されまくる小説が読みたい」って須田さんが呟いてたらもう書くしかないよね!!!!!
でも、BL書くのとか久しぶりすぎだったから色々酷いことになりましたごめんなさい(土下座)




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