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□白夜夢
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ふと、目が覚めた。
部屋の暗さからして、もう遅い時間らしい。
上手く回らない頭をなんとか働かせて、寝る前のことを思い出す。
ええと、確か、
朝起きた時から体がしんどくて、それでも我慢していたら、神楽に顔が赤いと言われ、新八に熱を計らされ、ババアに薬を飲まされて、それからずっと寝てた……んだっけ。
そりゃまぁ、昼から寝かされりゃ、変な時間に目が覚めて当然だよなぁ。
なんて思いながら一息つくと、

「――何だ、起きたのか」

すぐそばから、声がした。

「風邪で寝てるって聞きつけたから、絶好の機会だと思って殺しにきてやったのに」

くく、と喉で笑った方を、頭だけ動かして見る。
息が詰まった。
こんなところにいるはずのない、今にもこの部屋の闇に溶けてしまいそうな黒髪の男が、そこにいたから。

「たか、すぎ」
「よお、銀時。久しぶりだな」

無意識のうちに名前を呼ぶと、やつは意地悪く頬を歪めた。
そんな声してるようじゃ、俺がわざわざ殺さなくてもすぐ死にそうだな、なんて言ってまた笑いやがる。
お前なんかに殺されるくらいならこのまま死んだ方がよっぽどマシだ、とマジで死にそうなくらい掠れた声で応える。
独特の煙管の匂いが鼻腔を掠めた。

「……あ、分かった」
「ん?」
「お前、本物の高杉じゃねーだろ」
「あ?」
「これってあれだろ。熱でうなされながら見てる、俺の夢ん中だろ」
「なんだそりゃ」

高杉(もとい俺の脳が見ている夢)は眉をひそめた。

「ちっ、何だよ、せっかくならお前なんかじゃなくもっといいもん見たかったぜ」
「…………悪かったなぁ、俺なんかで」

もうどうでもいいといった感じに、小さくため息を吐かれる。
そうしたいのは俺の方だっつの。

「なら、これは埋め合わせだ」

そう言って顔を近付けてきた。
一瞬、唇が触れる。
熱のせいか、冷たいと感じた。
それが気持ちいいと思った。

「……風邪っぴきにこんなことして、馬鹿かお前。いくら夢とはいえ感染(うつ)っても知らねーぞ」
「そしたら、今度はお前が俺の夢に出て来い」

もう一度「馬鹿かお前」と言ってやりたかったが、できなかった。
それこそ馬鹿みたいに、高杉が真顔だったもんだから。
すると、やつは時計を見て「ああ、もうこんな時間か」と呟いた。

「さてと、そろそろ帰るとするかな」

夢の中なのに帰るとかあるのか。
またまどろんできた頭で考える。

「あばよ、銀時。今度は殺し合いの場か、――できれば、俺の夢で会おう」

部屋を出て行く音がして、そんなに時間が経たないうちに、俺は再び深い眠りの中に落ちた。
あいつが出て行ってしまう前に、そう思ってるのはお前だけじゃねぇ、と言ってやればよかった、なんて少し後悔しながら。

仕方がないから、この風邪が治ったら、きっと今の俺と同じように寝込んでいるやつのところへ行ってやろう。
そんでもって、いつもより冷たいキスの気持ちよさを教えてやろう。





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*次はあとがきです



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