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□甘い菓子
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【ギャップと嫉妬と彼氏】
「なるほどー」
彼女は何度か頷いて、それから笑った。
「でもさぁ、竹宮ちゃんも同じこと言ってなかったっけ?……あ、だよね。そうだと思ったんだ」
手持ち無沙汰の俺は、いつも持ち歩いている文庫本を開いて待機することにする。
……何で女の子の電話って長いんやろ。
彼女の携帯にコールが掛かったのは、俺が持ってきたお菓子(どうせ俺はまだ手ぶらで来る勇気がないチキンですよ)を食べながら彼女オススメのDVDを見ていた時だった。
「ちょっとごめん」とキッチンの方へ席を外してから15分。
「つぐみも一回やってみやぁ。案外楽しいかもしれんに」
聞こえてくる言葉の端々的に、おそらく相手は地元の友達だ。
ところどころに付けられたら方言は、俺の前じゃ滅多に使わない。
だから、なんだか新鮮で、
「えっ、つぐみ、もうやったの?で、どうだった?」
「――だがん!めっちゃ面白いがん!」
とにかく可愛い。
もー、なんだよちくしょう。
何でそんなにいい笑顔で訛るんだよ。
可愛すぎだろ。
極度の人見知りといっても、内気な性格じゃあない。
はっきり言うところは言うし、芯はちゃんとしてる。
自分の好きなもの(例えば今一時停止中の映画とか)を語り出すと止まらない、熱血なところもある。
ただ、第一印象が「大人しい子」だった俺にはその全てがとても意外で、だからそのギャップがおそろしいほど効いてしまう。
ちょっと大きい声だったから方言聞こえちゃったかな、とこちらを気にするあたりとかもひっくるめて可愛いと思う。
――でも。
「あ、ちょっと待って」
俺が来たのに気づいて慌てて電話口を抑えた。
「ごめん、もうすぐ切――」
慌ててそう口走った唇を、かすめるようなキスで塞ぐ。
彼女の顔はすぐに赤くなった。
「俺のことは気にせんでええよ。ゆっくり話し」
――でも。
少しだけ嫉妬させて。
俺の前じゃ恥ずかしがるのに、地元の友達にはその言葉を使うところに。
「……ごめん、もう大丈夫」
誰か来たの?と尋ねてきた友達に、「うん、彼氏」と短く答えた。
顔が熱いのはその答えに照れたからじゃなく、いきなりされたキスのせいにしておく。
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このシリーズが好きだとTwitterで言われたので調子に乗って書きました(^///^)
単純でごめんなさい(笑)
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