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□甘い菓子
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【きみのいちばん】



自分と同じシャンプーの香りがふわりと漂う。
目の前の彼女は、さっきからずっと鏡越しににこにこと笑いかけてきていた。

「機嫌良いな」
「うんっ」

満面の笑みに見つめられるのに耐えられなくなった俺は、櫛を探すフリをする。
……あぁ、ダメだなぁ。

「ふふー。シャンに髪結って貰うの好きー」

興奮して左右に動き始めた小さな肩を押さえつける。

「ならじっとして」
「えー」
「ディナ」
「はーい」

一度不平を言った唇は、でも嬉しそうに緩んでいた。
俺は明るいブラウンの長い髪をブラッシングする。

さらさらと流れるふわふわのそれを見てただ、綺麗だな、と思う。

「なーに?急に黙っちゃって」
「い、いや、何も」

どもってしまった俺に「変なシャン」と首を傾げて言う。
咳払いで誤魔化す。

「2つ結びでいいよな?」
「うん」

櫛でうまく左右にブロッキングして、片方を仮止めした。

「シャンって2つ結び好きだよね」
「え?」
「だってほとんどそうだもん」

思い返すと、ほんとだ、かなりの頻度で2つ結びだ。
チェックの小さなシュシュで右の髪束を耳の下あたりでくくる。

「簡単だから
?」
「……いや、そういうわけじゃないけど」

俺は答えながら仮止めを外した。
手持ち無沙汰なのか、ディナは足をフラフラさせている。
もう少し太ってもいいんじゃないかって思うくらいには細い脚だ。

「多分だけど」
「ん?」

数回櫛を通して、

「お前の髪質に一番似合う結び方だから、無意識に選んでるんだと思う」

左側の髪束もシュシュでくくる。

「お前の髪、ふわふわしてるから、結わえちゃうともったいない気がすんだよ」

シュシュの高さがそろってるのを確認して、「よし」と頭を撫でる。
くるりとこちらを向いたディナは、花が咲いたような笑顔を見せた。

「ありがと」
「ん」
「可愛い?」
「可愛い」
「えへ」

そのままぎゅむ、と抱きついてきた彼女を抱きしめ返す。

「じゃあせっかく可愛くなったことだし、」
「うん!」

出かけるとしよう。





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