短編

□Reward for writer
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▽ホワイトデー企画 3/14



唸る。
頭を傾ける。
また唸る。
元に戻す。

「……それ、意味あんのか?」
「なきにしもあらず」

俺は短くあっそ、と流した。
暖かいコーヒーをすする。

「何でも良いから早く書け」
「無茶言わないでよー」

口を尖らせる彼女。

「今いいとこだから、ゆっくり時間をかけて丁寧に仕上げたいの」

そりゃ、俺だって鬼じゃない。
作家が書きたいように書かせてやりたいとは思う。
――だがしかし。

「そういう一人前な口利く前に締め切り守りやがれ」
「だって私プロだもんっ!」
「同じこと言わせる気か?」
「あだっ」

短い前髪のせいで広くでているでこを指で弾いてやると、彼女は大げさに騒いだ。

「いったーたたたた。ちょっともー、今の衝撃でせっかく思いついた主人公の台詞飛んだー」
「そりゃ悪かったな」
「お詫びに名駅で天使のチョコリング買ってきてぇん」
「気持ち悪いねだり方すんな」
「だって食べたいんだもーん」
「ならしっかりやることやれ」
「あーはいはい」

ぶーぶーと不満を言ながらもタイプを再開した小さな背中に「もう買ってある」とバラしてしまいそうになる前に、俺は彼女の仕事部屋を出た。

あの様子なら30分もあれば書き上がるだろう。
その間に切り分けといてやるか。





よかったら拍手をどうぞ...



*次はあとがきです



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