短編

□終焉ノ、宴
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「どうして、」

こうなったのかな。

なんて、君が尋ねてくるから。

「しかたないだろ」

僕は呆れたようにそう答える他なくて。
ただ、グリップを握る力を強くした。
銃口は黙ったまま彼女に向いている。

「僕はもう、こうなる運命だったってとうの昔に割り切ったよ。――本当は君だってそうなんだろ?」
「……だけど、後悔しなかった日は一度もなかった」

彼女は否定しなかった。
つまり、そういうことなんだろう。

「君を止めれる場面は何度もあったのにそれができなかったのは、私たちが甘かったから。もっと強ければって、」
「そんな後悔は無意味だ」

彼女の言葉を遮って続ける。

「現に君はいつまでも甘くて弱い」

彼女を見る。
小さな体で、武器一つ持たず(僕がさっき壊しただけだが)、こちらを見つめていた。
胸元のネックレスが月明かりできらきら光る。

「甘いのは君の方でしょ?」

向けられている銃が怖くないのだろうか。
そう思わせるほど、強気な口調だった。
一戦交わる前に言った、『今夜で終わらせる』と同じぐらい。

「私たちが君を逃がしてしまったのと同じだけ、君だって私たちを殺さなかったってことなんだから」


「結局君も甘いのよ」


――あぁ、なるほど。
どうやら彼女は僕が引き金を引けないと高をくくっているらしい。
そっかそっか。

「そんなに僕に殺されたかったのなら、早く言ってくれれば良かったのに」

そして乾いた銃声が辺りに響き渡った。



「え?」

酷く間抜けな声。
左手で胸に触れる。

「なん……で……」

赤い。
熱い。

右手から力が抜けて、銃が滑るように落ちた。
その無機質な口から、白煙は漂っていない。

彼女を見る。
でも、変わらずただ立っているだけで、手には何も持っていない。

何が起き――――

「こっちだよ」

思考の停止を促すように聞こえた声は後ろからだった。
振り返ると見知らぬ男が銃を構えていた。

そして瞬時に全てを理解した。

彼女を見て、改心の笑みを浮かべる。

「そういうことかよ」

今晩二回目の納得。
くらくらする頭を回転させて、どう考えても彼女のとこの男のネックレスは同じ物だと気づいた僕は、

「嘘吐き」

1人で来ると約束していた彼女にそう吐き捨てて、前のめりに無残に倒れた。

「……だってもう、これで終わりにするって決めてたから」

お互いの甘さでここまで生き延びて来れたということは。
どちらかがその甘さを捨てたときに、もう片方が命を落とすということ。

つまり僕らはそういう運命だった。



(さぁ、これで地獄は終わった)

(今までの殺し合いなんて忘れて)

(君はその男と幸せになれ)





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*次はあとがきです



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