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□甘い菓子
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【うたうたいlovers】
彼女とカラオケに行くなんて,もう何年ぶりだろう。
「錦戸さん,お先にどうぞ」
「サンキュー」
無愛想なりに年上には敬意を向けるのが彼女らしい。
俺は遠慮なく1曲目を入れた。
しばらくして,聴き慣れたイントロが流れ始めた。
「……好きですね」
「悪いか」
「いーえ,別に」
ただ,と機械のディスプレイを覗いていた顔を上げて続ける。
「本人の曲を本人の目の前で歌うって言うのも,なかなか勇気のある行動だと思いまして」
俺は笑って,「そうでもないだろ」と肩をすくめた。
今から歌う曲の持ち主はどうでもよさそうにまた下を向いた。
――ムカつくなぁ。
まぁ,俺も大人だしな。
生意気な年下の態度なんか気にせず歌うよ,うん。
「…………」
けどその穴があくほどの視線は気になるけどな。
「……どした?」
歌い終わってからマイクを置くと,彼女はまだ2曲目を入れてなかった。
「錦戸さん,上手いなぁと思って」
「は?」
「私より全然この曲歌いこなしてます」
「いや……そんなことないと思うけど……」
「悔しいから私も歌います」
好きにしてくれ。
思いながら烏龍茶をすする。
出会ってから4年経つが,未だに彼女のペースは掴めない。
ていうか,一生無理だろうな。
「………………」
さっきの彼女がそうしていたように,俺も彼女を見つめる。
――安心しろ。
お前の方が,ずっと上手いから。
俺は狭い部屋に埋め尽くされた彼女の声に酔いながら,今度は彼女のじゃない曲を入れた。
「どうでした?」
「レコーディングじゃないんだから,そんな堅くならなくても」
「で,どうでした?」
話聞けよ。
「……よかったよ」
「そうですか」
にこりともしないままマイクを置いて,機械をいじり始めた。
――ほんと,可愛げのないガキだ。
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連載しようと思ってて諦めたので,設定なんかが意味不明ですみません。
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