大切なものを
□過去のお話
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物心ついた頃には、自分が周りの人とは違う事に気づいていた
まず周りの人より異常に傷の治りが早かった
浅い切り傷くらいなら10分もあれば、傷なんて無かったかのように元通りになっていた
あとは他人の傷を自分に移す事が出来た
人の傷に触れれば、その傷は自分へと移動した
ある日、此の情報を何処からか掴んだ人達が家へと来た
その人達は大量の札束を机に置き云った
「其の子を買いたい」と
両親たちはお金に目が眩んだのか、私を簡単に手放した
7歳くらいだっただろうか
私は両親から引き離された
私の意志なんて、其処には無かった
小さな私は知らない男達に手を引かれ、大きな建物(ビルヂング)へと連れてこられた
「此処が今日から君が住む場所だ」と云われ
其の日から実験と云う名の拷問まがいの事をされる日々が続いた
何処までの程度の傷を私に移せるのか、と色々な理由で負傷した人の傷を移させられた
ナイフで抉られたような傷、銃で撃たれたような傷・ ・ ・
たまに思った事があった
この人達はこんな怪我を何処でしてくるのか
そんな傷を移されても傷の治りが早い私は死ぬ事はなかった
否(いや)、死ぬ事は出来なかった
死んだ方がどれ程楽だっただろう
だが私にその権利は無かった
死なれると困る、と男達は私を生かした
最低限の衣食住があったが、其れ以上は無かった
服は布切れのようなモノ、食べる物は死なない程度、住む場所は牢屋のような場所
数年すると私は全てを諦めた
流れに身を任せ、全てを受け入れた
慣れと云うものは怖いもので、そんな生活に慣れ自分の意志を一度失った
それからまた数年が経ったある日、転機が起こった
16歳の年だっただろうか・ ・ ・
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