上条当麻と一方通行

□メール
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「がぁぁぁぁああああああっ」


上条当麻は自宅のバスタブ(湯は張られていない)で頭を抱えて、本日何度目かの絶叫をあげていた。


「どうしたらいいんだよぉ」


時刻は午後10時をすぎたところで、インデックスは居間ですやすや眠っているはずだ。


「どうする、どうする…」


彼の右手には携帯が握られていた。画面は真っさらな新規メール作成を表示している。


「なんて送ればいいんだっ!」


宛先は一方通行、アクセラレータ。本日なんやかんやあり、上条はなんとあの一方通行のメアドをゲットしてしまったのだった。

しかし彼にメールを送ったことはなく、携帯の画面は10分前からずっと真っさらな新規メール作成画面である。


「今日はありがとうございました、とか……いや、ありがとなーの方がいいのか!?いいんでせうか!?」


ばったんばったん、ぎしぎしとバスタブが悲鳴をあげるが焦っている上条には知ったこっちゃない。メール作成で頭がいっぱいだった。


「っ、つか早く送らねぇと………………………よしっ」




To:一方通行
From:上条当麻

今日は付き合ってくれてありがとな。
よかったらお礼させてくれないか?
今度は一方通行の行きたいとこ行こうぜ




「いやなに俺さりげなく次に会う約束とりつけようとしてるんだほんとバカか!」


書き直そうかと思ったけれど、また一方通行と二人で遊びに行きたいという気持ちが事実抑えられないわけで。そのままメールを送ってしまった。


「てゆーかアイツ人に返信とかするのか?やっべー、想像できん……」


とりあえず一方通行からの返信を待つ間、いつも通り携帯で深夜番組を見ることにした。

テレビを見ていても返信が気になって気になってしょうがない。
携帯の画面はついているから返信がきたらすぐにわかるのだが、見逃してはいないだろうかと何度もチェックしてしまう。

メールを送ってから30分ほどした頃だろうか。


「っっ!」


ブーー、と着信を知らせるバイブが鳴り響き一通のメールが届く。慌てて先週一週間を振り返るニュース番組を閉じて、メールアプリを開く。そこには





To:上条当麻
From:土御門元春

カミやーん
今日舞夏いなくてさみ死にそうなんだぜぃ
どうにかしてくれ〜





「テメェかよッ!!!」


期待していた分、なんというかがっかり具合が半端でなく、『知るか』とだけ返しておいた。


「ううくそーっ、一方通行さんにはやっぱ返信スキルなんてないんでせうかー」


ぼやきつつだらんと両手を伸ばす。喪失感でこのまま眠ってしまいそうだったが、再び携帯がブーー、と鳴った。


「いいですよーもう期待なんてしてませんからー。どうせ土御門だろ土御門ー」


やけくそ気味にぽちぽちとメールを開くと





To:上条当麻
From:一方通行

そうかよ
別に行きたいとこなんかねえからテメェが勝手に決めろ





心臓がきゅっと掴まれるような、そんな気がした。差出人、一方通行の文字に心拍数が急上昇している。

いまいちこの気持ちの正体が、上条にはまだ掴めないでいた。


「っ、アイツマジで返信してくれた、てか次また一緒に出かけてくれるのかよっ!」


あたふたと携帯を落っことしそうになりながら、慌てて返信を打つ。行きたいところは既に決まっていた。





To:一方通行
From:上条当麻

じゃあ、次は水族館行きたい、お前行ったことなさそうだから。





上条的デートスポット、ナンバーワンの水族館。

何がナンバーワンか説明をつけろと言われたら自分でもわからないけれど、水族館。

暗い室内が演出する水族館独特の雰囲気は、ある意味大人のデートスポットのような気もした。



その後何度かまたメールのやりとりをして、次の日曜日に一方通行と水族館に行く約束を取り付けた。

気づいた時にはもう深夜2時を過ぎていて、一方通行にも早く寝ろと言われたのでおやすみと返信を打ち、やっべーと呟きながら上条は眠りについた。



メール 〜Fin〜
2014/06/22


→行間’ メール 〜another side〜

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