上条当麻と一方通行
□メール ~another side~
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「…………………………………」
アパートのベッドの上で携帯片手に一方通行はかたまっていた。
普段ほとんど着信のない彼の携帯に一通のメールが届いていた。
「……………………あの三下かァ」
たった今、届いたばかりのメールをぽちぽちと開く。
内容は、今日彼、上条当麻にコーディネートをしてやった礼と、またどこかへ出かけないかというようなものだった。
「あの三下と俺が会う約束をして一緒に出掛けるゥ?頭湧いてンじゃねェのか」
一方通行はそのまま、誰がテメェと約束してまで出掛けるかよ三下、と送りそうになった。
実際そこまで打って、送信ボタンに手を伸ばそうとしたときだった。
「っ……………」
ぎりぎりで思いとどまって、かいた文面をとぅるるーっと全て消す。
一度携帯を閉じてぼっすんと枕に顔をうずめた。
「ンだよコレ……どうしたらイインだよどうしたらイインですカー?」
ぱふぱふ、と枕の上で顔を跳ねさせる。はたから見たら非常にかわいらしい光景なのだが、残念ながら目撃できたものはいなかった。
「三下と………出掛ける………………この俺がァ?」
実際今日、行動を共にしたのだがそれは偶然会っただけであり、一方通行は無理やり連れて行かれただけだ、と自分では思っている。
「イヤイヤイヤ………………この三下ぜってェ頭沸いてやがンぞ」
再び携帯を開きメールを読み直す。何回読んでも、それは『またどこかへ一緒に出掛けよう』というものなのだ。
「しかも俺に行き場決めろって……………………なンの罰ゲームだァ?」
というかそもそもまたアイツと一緒に出掛けたいのか自分は。ということをゆるーりと考え
「………………………………………………………………………出掛け、たィ…」
たっぷり思考してはじき出された答えは、彼を知っている人が聞いたら卒倒するものだったが、1番驚いたのは自分自身である。
「は?イヤイヤイヤ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。ワケわかンねェだろオイどうなってやがるッ!」
珍しく狼狽えながら、必死に思考を整理する。
意識して思考を整理する、ということをしたことがなかったのでかなり手間取ったが
「三下が俺と出掛けたがってる………………………俺も出掛けてやってもイイと思ってる………………………俺に出掛けたい場所を聞いてきてやがる………………………」
そこからまたうんうんと考えて
「じゃあ出掛けちまえばイインじゃねェの?」
その答えにたどり着くのにおよそ20分ほどかかったのはいかがなものか、と思わなくもないけれど一方通行の頭は、次はどのように返信すればよいかということにシフトしていた。
「っつっても行きたいトコなんかねェよ」
出掛けたい、でもどこに出掛ければいいかわからない。どうしたものかとうーーーーーんとうなり
「っまァどこでもイイか」
相手に選択権をそのまま返してやることにした。考えることを放棄しただけだが。
ようやく返信画面を開きぽちぽち打ってメールをかきおえる。
ふーーーっと息をつき、送信しようとしたところでまた急に不安になり何度も何度もメールを見返してしまう。何十回も読み直して
「まァおかしなトコはねェだろ」
そういってようやく送信ボタンに手をかけた。
まるで待っていたかのように上条からの返信はすぐに来た。
「すいぞくかん?」
出掛け先を上条に丸投げしたら水族館とかいうこれまた一方通行とはご縁が皆無な場所だったが、別にどこでもいいと思っていたのでそのまま承諾して今度はすぐに返信してやった。
待たれていたと思うと、早く返信してやりたくなったのだ。
そこから先はぽんぽんと決まって行き、来週の日曜日にまた彼と出掛けることになった。行き先はもちろん水族館だ。
何通もメールを送りあっていると、いつの間にか時間は経っているもので、数時間後には学校へ行く支度をしなければならないであろう上条のことを考え『早く寝ろ』とメールをしてやったら、『そうだな、じゃあおやすみ、一方通行』と返信がきた。
寝ろっつったら早く寝ろよ、と思いつつ一方通行もそのまま携帯を閉じて寝ようとしたのだが
「……………………」
ぽちぽちっと、もう見慣れた返信画面を開き
To:上条
From:一方通行
おやすみ
とだけ送って今度こそ携帯を閉じた。その後携帯は鳴らなくなったので、上条が自分の返信を読んでくれたのかはわからないがとにかく自分も寝ることにした。
「日曜日、ナニ着てくかなァ………」
言ってから、バカじゃねェのと思いハッと鼻で笑い、布団の中で目を閉じた。やがてすやすやと規則正しい寝息が室内を満たした。
メール 〜another side〜 〜Fin〜
2014/06/22
→2話. 掴めない距離感