上条当麻と一方通行
□暗いバスタブ
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認めよう。俺、上条当麻は一方通行が好きだと。
我ながら疑問なのだが、なぜよりにもよって一方通行なんだ。御坂美琴でもなく?インデックスでもなく?
インデックスは、なんか、ダメだ。手を出したら赤髪神父に焼き殺されるだろうし、そもそも手を出してはいけないと本能が告げる。
御坂美琴は?嫌いではないけれど、ぜんぜん嫌いじゃないけれどもしかしたら好きなのかもしれなかったけれど。
今となってはそういう感情は湧いてこない。
もちろん他にも姫神とか吹寄とか、土御門の舞夏とか。かわいいのはわかっているけれど
「一方通行よりかわいくて、腰細いやつなんていなくね?」
たぶんそうだ。まあそれは一方通行が細すぎるのがいけないのだけれど。
「つか、だからっていきなりキスはまずかったんじゃ…………?」
先ほど上条は一方通行と放課後デートを楽しみ、なんと触れるだけとはいえキスまでしてきてしまった。
今考えるとどうやってあの一方通行にキスなんてできたのか不思議でしょうがないのだけれど、したものはしたのだ。
とりあえず上条は深夜のバスタブで一人、反省会もとい一方通行への思いを募らせる会を始める。
「しかもあのあとメールないしッ………!」
家に帰ってから何度もぱかぱか携帯を開いて確認しているのだが、一方通行からのメールはない。
というか上条からもメールをしていない。だってなんて打てばいいのかさっぱりわからないのだ。
「もしかして、つーか、もしかしなくても…………………嫌われた……?」
自分で言った言葉がぐっさりと心にささり、ぐおぉーと一人身悶えするけれど狭いバスタブではあまり自由に動けない。
「っ、ど、どうしよ………やっぱ俺からメールしなきゃ、か……?」
ぱかっと開いた携帯にはやはり新着メールはない。
どうしようどうしようと悩んだまま、刻々と時間は過ぎて行くだけだ。
「っ…………………いや、やっぱメールして返信なかったらガチでヘコむし……今日は、やめとこ」
冷静に考えて、結局メールはせずに携帯ははじっこに置いておくことにした。昨日と違って、沈黙を保ち続ける携帯がなんだか辛い。
「あ〜〜。好きなんだな、一方通行が………はぁぁぁぁ」
手入れなんてしてませんと安易に語る彼の唇は、荒れているわけでもなく、かといってべたべたリップがついているわけでもなくて。つまり、なんというか
「そういう、素なかんじが、かわいーっつぅか」
風呂場に持ち込んだ、一昨日撮ったプリクラをまた眺める。
一方通行が描いた「三下」の文字を見るたびなぜかドッキンと大きく脈動するのを感じる。
「ネクタイとかさ、似合っててさぁ。てかてかしたズボンも、冬になるといつも履いてるよな。シャレオツめ……」
そのオシャレセンスに助けられたことを棚に上げてぶつぶつ呟く。もちろん悪口ではない、彼のかわいい・かっこいいところを絶賛列挙中だ。
「ふわふわ猫っ毛、かわいた唇、ほっそい体……」
鎖骨が浮き出ていて、彼の白い体に真っ黒な電極がとても対象的で。コントラストが目にまぶしい。
たいてい気だるそうな目で俺を見返すけれど、たまに頬を朱に染める。白いぶん、そういう変化はわかりやすいからありがたい。
照れたときは必ず目を斜め上に逸らして、片手を頭にあてる。
冷たいようで、しかし今の彼はとても優しいことがこの数日で身に染みた。
もう、彼なしでは、いられない。
照れて顔を背ける一方通行はかわいいけれど。
困っていた上条を、なんだかんだで助けてしまった優しさがとても愛しいけれど。だけど。
「それでもッ………………………!あんな、かわいい顔をするのは…………」
俺の、前だけに、してくれ。
他のヤツに、見せたくない。
上条の中で膨れ上がる独占欲はどんどんその重みを増していって。
「っ、な、ちょッ!」
気づけば、下半身の一部が膨らみ始めていた。ズボンの中で、上条の男根がここだというように主張する。
「う、そだろ………………いや、えっと…………これって、いいの、か?」
抜いていいのか。一方通行で抜いて許されるのか。
どうしよう、抜きたい。抜きたくてたまらない。
上条が悩んでいる間にもどんどんそれは大きくなっていく。
「っ、くそっ!我慢なんてッ…………無理に決まってんだろッ!」
ダンッと右拳をバスタブに叩きつける。じんじんと痛む右手をさする余裕もなく、上条は己のズボンに手を伸ばす。
寝巻き用の緩めのズボンをずりっと下げると、ノータッチでこうまでなるのかと言いたくなる勢いで男根が下着を押し上げていた。
ゴクリと唾を嚥下してそろそろと下着に手をかけて、下げる。
「んッ…………んぅ………あ、あく……せられぇたぁ……………」
くちゅり、と先走りに触れてそれを使い手を滑らせやすくする。右手を上下させるたび、くちゅんっくちゅんっといやらしい音がバスルームに響く。
「っ……ぁくせられーたーッ……」
その名前を自分で呼ぶたびに、手の中のソレがぐん、と一段階大きくなるのがわかる。
なんか、普通の、オナニーとは違うというか。一方通行の名前を呼ぶだけで、ずしりと腰にくるモノがある。
「あッ、あッ、あクッ……アクセラータァッ!」
ちらりと脇においてあるプリクラを一瞥する。ぱっと見、不機嫌そうな顔。けれど、いつもよりちょっと眉はおだやかで。斜め上を向いていて、照れているのがわかる。
彼の顔を視界に収めると、さらにいっそう男根が主張を激しくする。最初とは比べものにならないくらい固く、太くなっていた。
「あゥ……ゥゥ、せら、れーたぁ…………………好き、だ……」
気を緩めると、もう精を吐き出してしまいそうだ。上条は自慰をすこしでも長くするため、ぐっとその衝動をおさえる。
それでも、たらたらと流れるカウパー液でソレは十分に濡れていてスムーズに手が動かせる。
ぐっぐっと激しく手を上下に動かして、亀頭をなぞり、ぷちゅっと先っぽをおさえる。
ふわふわ、真っ白な、彼なら。こういうときなんて言うだろう。きっと、おそらく。
「イッちまえよ、カミジョー」
にっと、いやらしく笑う、一方通行の姿を想像して。とうとう限界を迎えて、辺りに白濁をぶちまけた。
バスタブの中だったので遠慮なくぶちまいてしまった。ティッシュないのにどうしよう。
「ッ、は、はは…………」
汚れていない腕に顔をうずめ、困り果てる。
やってしまった。一方通行で抜いてしまった。
「あー…………………どうすんだよ、水族館デート………」
もちろん、楽しみでしょうがない。しかし、問題は
「一方通行を前にして、いったいどこまで抑えられんのかね、俺は」
その答えはわからないけれど、自分の我慢強さに全てをかけるしかなかった。
射精後特有の倦怠感と共に、バスタブの掃除もせず上条の意識はずるずると闇に引き込まれていってしまった。
端に避けていた携帯は、相変わらずメールの着信を知らせない。
暗いバスタブ 〜Fin〜
2014/7/2
→3話. アクアリウム