花巻くん攻略本がほしい!
□雨と飴
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花巻side
最近、芹チャンと2人で電車に揺られた時の少し儚げにも見えたあの笑顔が脳裏を掠める。
しかも芹チャンの恋を応援してやろうと思ったのに断られたし。
んだよ。
しかも………多分気のせいじゃない。昨日の球技会の試合終わり、無視された。
原因がわかれば俺は満足するタイプなのに。
わかんねぇと困る。
教えてくんねぇかな。
なんでこんなに気にしてるのかは考えないことにした。
葵のことは大切だ。でも最近なんだかもやもやと心に霧がかかっているような気がするのだ。
それが何か全くわからない。
葵が芹チャンを嫌ってることに関係するのかもしれない。
なんとか、仲良くやってくれないだろうか。
今日は部活がないため、松川と帰ろうと思ったら、補習で帰れないと言われたので先に帰ることにしたのだ。
昇降口の近くまで来て、ドアをくぐって口をあんぐりさせ、びしょびしょになりかけている芹チャンを見つけた。
彼女は覚悟を決めたように片手を握りしめ、歩き出した。
走ればいいのに、面倒だからか、むしろゆっくり歩いている。
はぁ、手間がかかる。
後ろから大声で声をかけた
「芹チャンー!」
聞こえないわけはない。だが彼女は立ち止まらず歩んでいる。
雨足はつよい。
俺は頭をガシガシとかいて、走って葵チャンに追いついた。
「おい、芹チャン。傘。どーぞ、風邪ひくよ」
彼女は未だ立ち止まらず無視だ。
俺はちょっとというか結構イラっときて、
「無視すんな」
肩を掴んでくるっと回し、俺の方を向かせた。
「きゃっ」
ついに声を出した。
「あのさ、人が優しくしてやってんのにそれを無駄にすんの?それは人として最悪じゃない?俺も濡れちゃうんだけど」
あ、やべ。ちょっときつく言い過ぎた。
謝んなきゃと思っていると、
「ごめんなさっ」
と言って走って逃げようとしてしまった。俺はすかさず手首掴んだ。
「いや、離して!私、人として最低なんでしょ。謝るから。もう話しかけないで!花巻君となんか話したくない!」