花巻くん攻略本がほしい!

□花巻くん攻略本がほしい
1ページ/1ページ

吸い込んでこぼれ落ちたのは涙だった。


ポロポロと次から次に涙が出てきて、声が出なかった。


なんで。



まだ私は振られるのが怖いんだ。



でも言わなきゃ、これだけは



なんとかして話そうとするけれど嗚咽はひどくなってく


「うっ、うっ」



花巻くんはポカーンと口を開けていた。



でも



私の方に近づいてきた。




次の瞬間私には何が起こったのかわからなかった。



シュークリームのような甘い香りに包まれた。



そして頭をポンポンと規則正しいリズムで撫でられて


「ゆっくりでいーよ」



と言った。



それに安心した私は急に足の力が抜けて



カクンと地面に倒れそうになった。



「おっと」



花巻くんは受け止めてくれた。



今なら話せる私は花巻くんの方を向いた。



彼の背は私よりも全然高くて首がちょっと痛かった。



「花巻くん…私は、花巻くんのこと高2の秋からずっと好きでした でもその頃にはもう花巻くんは別の人を見てて、私……くるしかっ、でも、それでも、あ、きらめられなくて」



声が震えてく



「ねえ今も俺のこと好き?それとも好きでした?」



そう聞かれて



「もちろん今も…こ、これからも」



心拍数が上がりすぎで心臓が悲鳴をあげている気がする。




「俺も、好きなんだけど。あ、現在進行形または未来形で。」



その一言を聞くために生きてきた。そう言っても過言じゃないほど嬉しかった。



嬉しすぎてまた涙が出てきて、鼻水が垂れてきそうだった。



乙女ゲーは攻略本なしになんでもクリアできた。



でも、君は攻略本が欲しくなる程愛おしくてクリアしたかった人です。



私はニシシと笑って



「花巻くん攻略本がほしい」



小声で言って、君が何かを言う前に、









……………その口を塞いでやった。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ