夢小説集@

□宝石の国
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死涙の背信
※やや特殊設定、8巻ネタバレを大きく含みます、薄情に死涙の続き


「君の体質を利用できるかもしれない」

ラピスの顔をした薄荷色の彼は提案を持ちかけてきた。
それは月へ行かないか、との誘い。
突然黒点から落ちてきたと思えば様子がおかしくて、更にはこうやって他の子にも誘いを持ちかけているという。

「古いインクリュージョンが必要なの?」
「ああ、月では先生を騙すために偽物のインクリュージョンを使っていた。もしかしたら、君の古いインクリュージョンは有効活用出来るかもしれない。」
「絶対に使えるわけではないのね」

白い衣服に身を包み、片目を真珠に変えて帰ってきたフォスは少し神秘的で知的に感じる。おそらく、知的な部分はラピスの影響だけど。でもフォスの口から出てくる言葉は久しぶりとかそういうのじゃなくて、酷く言えば「先生を裏切って月へ行こう」というものだと思う。そこだけ、とても不気味に感じた。薄暗い部屋で光る真珠の瞳は私をまっすぐ見据える。

「絶対でなくても、必要かもしれない。君の力が借りたい。ダメかな」
「う、うーん…」

大好きなフォスの「ダメ?」に弱かった私の馬鹿野郎。
頷いてしまった。

「ありがとう、ミツバ」

真珠の瞳が光る。

「ねぇ、フォス。月には何があったの?」
「…月には」

よく分からないものが沢山あったけど。唯一分かったのは、まで言いかけた口を閉ざした彼は「月に行ってから教えてあげる」と自身の口元に人差し指を当てた。

「ずるい、気になってドタキャンとか出来ないじゃん」
「そもそも君は僕との約束破ったことないだろ?」
「それもそうだけど」

ここから見える月よりも、本物の月は綺麗なのだろうか。そう思うと提案された役割よりも少し楽しみになってくる。

「行く日はまた後で。」
「うん。」
「ミツバ」
「何?」
「ありがとう。僕を選んでくれて。」

いいのよ、大好きなフォスの頼みだもの。

「…うん。」

…先生、本当にごめんなさい。
けど、涙は出ないの。多分、悪いと思ってないのかもしれないけれど、でも、ごめんなさい。

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